問いただす前に、
証拠を押さえる。
経理担当者の口座に不審な送金がある。集金した売掛金が入金されていない。仕入先からのキックバックの噂がある。横領や不正の疑いが生じたとき、経営者が最初にしてしまいがちなのは、本人を呼んで問いただすことです。しかし、その一言で、本人は証拠を消し、財産を移し、否認の準備を始めます。
越水法律事務所は、法人・事業者の側に立ち、横領・不正の発覚から、証拠の保全、社内調査、弁護士立会いの事情聴取、返還交渉と弁済合意、仮差押え・訴訟による回収、懲戒解雇の適法な手続、刑事告訴、身元保証人への請求、再発防止体制の構築までを一貫して担当します。税理士が在籍しているため、帳簿・仕訳の分析を含む不正調査を事務所内で完結できます。
本人に気付かれる前に、帳簿・データ・防犯映像・通信記録を保全し、調査の方針を決めます。
返還請求、懲戒処分、刑事告訴を別々に進めず、回収を最大化する順序で組み立てます。
税理士と連携し、帳簿の分析、被害額の確定、税務処理まで対応します。
会社で起きる横領・不正の類型
横領・不正は、担当する業務と権限によって手口が異なります。当事務所が会社側で対応する主な類型です。
経理・財務担当者による横領Accounting
出納と記帳を一人で担っている場合に起きやすく、発覚が遅れて被害額が最も大きくなる類型です。
- 会社口座から自分の口座への送金
- 架空の請求書に基づく振込
- 給与・経費精算の水増し
- 小口現金の抜き取りと帳簿の改ざん
- ネットバンキングの権限濫用
- 税金・社会保険料の未納と流用
営業・集金担当者による横領Sales
顧客から受け取った現金を入金せず、「未収」「値引き」として処理する類型です。顧客の信用も損なわれます。
- 集金した売掛金の着服
- 値引き・返品を装った差額の取得
- 顧客からの預り金の流用
- 架空の顧客への売上計上
- 営業経費・出張費の不正請求
購買・発注担当者の架空発注・キックバックProcurement
取引先と共謀するため社内だけでは発見しにくく、被害額が高額化しやすい類型です。取引先への請求も検討します。
- 架空の仕入先・外注先への支払
- 水増し請求と差額のリベート受領
- 納品のない発注(架空納品)
- 特定業者への発注集中と見返り
- 在庫・備品の横流し
店長・支店長・管理職による横領Management
多店舗展開する飲食・小売・サービス業で、売上金や商品の管理を任された責任者が行う類型です。
- レジ現金・売上金の抜き取り
- 売上の過少報告と現金の着服
- 商品券・切手・回数券の換金
- 部下への指示による組織的な不正
- 勤怠の改ざんによる給与の不正受給
役員・共同経営者による横領・背任Directors
権限が大きく、決裁を自ら行えるため金額が大きくなります。任務懈怠責任、特別背任、株主代表訴訟が問題になります。
- 会社資金の私的流用・仮装貸付
- 関連会社・親族への利益移転
- 役員報酬・退職慰労金の不正支給
- 会社の機会の私物化
- 子会社役員による不正
情報・データの持出しと私的利用Information
金銭ではなく、顧客情報・技術情報・仕入条件を持ち出して競合や転職先で利用する類型です。営業秘密侵害として対応します。
- 顧客名簿・取引条件の持出し
- 設計データ・ソースコードの複製
- 退職前の大量ダウンロード
- 競合への情報提供と見返り
- 会社の備品・車両・携帯の私的利用
発覚直後にやってはいけないこと
善意の対応が、回収と処分の両方を難しくすることがあります。ご相談前に、次の行動は避けてください。
証拠を固める前に本人を問いただす
本人は否認の準備をし、パソコンや携帯のデータを消去し、預金を引き出して隠します。事情聴取は、帳簿・データ・映像などの客観的証拠を保全し、質問の順序を設計したうえで、弁護士の立会いのもとで行うべきです。
給与や退職金から一方的に差し引く
労働基準法24条の賃金全額払いの原則により、会社が損害賠償債権と賃金を一方的に相殺することは原則としてできません。本人の自由な意思に基づく合意があれば相殺は可能とされていますが(最高裁平成2年11月26日判決)、合意の取り方を誤ると後に無効を主張されます。
即日、口頭で懲戒解雇を言い渡す
横領は懲戒解雇事由に当たり得ますが、就業規則の根拠、証拠に基づく事実認定、弁明の機会、手続の相当性を欠く解雇は無効とされ(労働契約法15条・16条)、地位確認と賃金の支払を求められます。解雇予告手当を支払わずに即日解雇するには、労働基準監督署の解雇予告除外認定(労働基準法20条3項)が必要です。
「返せば警察には言わない」と約束する
告訴しないことを条件に弁済を約束させる交渉は、脅迫や強要と評価されるおそれがあり、後の刑事告訴の選択肢も失います。弁済合意と刑事告訴の関係は、弁護士が適法な形で整理します。
社内で噂が広がるまで放置する
調査中の情報が漏れると、本人が証拠を隠滅するだけでなく、名誉毀損やプライバシー侵害を主張され、他の従業員の動揺と取引先の信用低下を招きます。調査は関与者を限定し、記録を残しながら進める必要があります。
口約束の分割返済で済ませる
退職後に返済が止まる例は少なくありません。弁済合意は、被害額の確定、支払方法、期限の利益喪失条項、保証人を盛り込んだ合意書とし、強制執行認諾文言付きの公正証書(民事執行法22条5号)にすることで、不払時に訴訟を経ずに給与や財産を差し押さえることができます。
発覚から解決までの流れ
事案により順序は変わりますが、標準的な進め方です。調査開始から弁済合意まで、通常1〜2か月を目安としています。
疑いの内容、判明している事実、本人の立場と権限、想定される被害額をお伺いし、証拠保全の範囲、調査の進め方、回収・処分・告訴の見通しを整理します。本人に気付かれないよう、相談の連絡方法にも配慮します。
帳簿・仕訳・銀行取引明細・請求書・稟議書・メール・チャット・防犯映像・入退室記録・業務用パソコンのデータを保全し、被害の全体像と金額を特定します。必要に応じてデジタルフォレンジックの専門業者と連携し、税理士が帳簿を分析します。
証拠を踏まえて質問の順序を設計し、弁護士立会いのもとで本人から事情を聴取します。事実を認める場合は自認書・弁済に関する意思確認書を作成し、財産の状況を確認します。否認する場合は、その供述自体を後の手続の材料として記録します。
被害額と本人の資力に応じて、一括弁済、分割弁済、親族による保証、不動産の担保提供などを組み合わせた弁済合意書を作成し、強制執行認諾文言付きの公正証書にします。合意に至らない場合や財産隠しのおそれがある場合は、仮差押え(民事保全法20条)で財産を保全したうえで訴訟を提起します。
就業規則に基づく懲戒解雇または退職合意、解雇予告除外認定の申請、退職金の不支給・減額の判断を、弁明の機会を確保して適法に進めます。刑事告訴を行う場合は、警察が受理しやすい告訴状と証拠一式を整えて提出します。あわせて、職務分掌・承認権限・内部通報体制など再発防止策を設計します。
弁護士ができること
横領・不正への対応は、調査・回収・労務・刑事・税務・再発防止という複数の分野にまたがります。当事務所は一つの窓口で対応します。
不正調査・証拠確保・事情聴取Investigation
返還請求・懲戒処分・刑事告訴のすべての土台となる証拠を、法的に有効な形で確保します。
- 保全すべき証拠の特定と保全手順の指示
- 帳簿・銀行取引の分析(税理士)
- デジタルフォレンジック業者との連携
- 関係者へのヒアリングと調査報告書
- 弁護士立会いの事情聴取と自認書の作成
- 取引先・共謀者への調査と請求の検討
返還請求・損害賠償請求・回収Recovery
本人の資力と財産の所在を見立て、回収を最大化する手段を選択します。資力のない相手からの回収戦略も設計します。
- 内容証明による請求と返還交渉
- 弁済合意書・強制執行認諾文言付き公正証書
- 預金・不動産・給与の仮差押え
- 不法行為・不当利得に基づく訴訟
- 転職先の給与の差押え(民事執行法152条)
- 身元保証人・親族保証人への請求
懲戒解雇・退職合意Labor
不当解雇として争われない処分の手続を設計し、退職金の扱い、秘密保持、口外禁止まで含めた退職合意書を作成します。
- 就業規則上の懲戒事由の確認と処分の選択
- 弁明の機会・懲戒委員会の手続
- 解雇予告除外認定の申請(労働基準法20条3項)
- 退職金の不支給・減額の可否判断
- 退職合意書・口外禁止条項
- 役員の解任・任務懈怠責任の追及(会社法423条)
刑事告訴・税務・再発防止Criminal, Tax & Prevention
警察が受理しやすい告訴状と証拠一式を整えるとともに、横領損失の税務処理と、同じ不正を繰り返さない体制を設計します。
- 業務上横領・詐欺・背任の罪名の整理
- 告訴状の作成と警察への提出・面談同行
- 横領損失の損金処理と損害賠償請求権の益金計上
- 職務分掌・承認権限・入出金管理の見直し
- 内部通報窓口の設置(内部通報窓口サービス)
- 役職員向けのコンプライアンス研修
根拠となる法令と時効
横領・不正への対応で問題になる主な法令です。刑事と民事、労務のそれぞれで手続と期限が異なります。
| 場面 | 根拠法令 | 要点 |
|---|---|---|
| 業務上横領罪 | 刑法253条 | 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は10年以下の拘禁刑。集金した現金、預かった商品、会社口座の資金の着服が典型。親告罪ではない。 |
| 詐欺罪・背任罪 | 刑法246条・247条 | 架空の請求書で会社を欺いて支払わせた場合は詐欺罪(10年以下の拘禁刑)、権限内の行為で会社に損害を与え自己や第三者の利益を図った場合は背任罪(5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。 |
| 役員の特別背任罪 | 会社法960条 | 取締役等が任務に背き会社に損害を加えた場合は10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金。任務懈怠による損害賠償責任(会社法423条)と株主代表訴訟(同法847条)も問題となる。 |
| 刑事の公訴時効 | 刑事訴訟法250条2項 | 業務上横領罪・詐欺罪は7年、背任罪は5年。長期に及ぶ横領では行為ごとに時効が進行するため、告訴の対象期間の整理が必要。 |
| 民事の損害賠償・返還請求 | 民法709条・703条・704条 | 不法行為に基づく損害賠償請求権は損害と加害者を知った時から3年(民法724条)、不当利得返還請求権は権利を行使できることを知った時から5年(同法166条1項)で時効。悪意の受益者には利息が付く。 |
| 財産の保全と執行 | 民事保全法20条、民事執行法22条・152条 | 訴訟前に預金・不動産を仮差押えできる。強制執行認諾文言付き公正証書があれば訴訟を経ずに執行可能。給与の差押えは原則として手取額の4分の1まで。 |
| 懲戒解雇 | 労働契約法15条・16条、労働基準法20条 | 客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要。解雇予告手当なしの即時解雇には労働基準監督署の除外認定が必要。 |
| 賃金との相殺 | 労働基準法24条 | 賃金全額払いの原則により一方的な相殺は不可。労働者の自由な意思に基づく合意相殺は可能(最高裁平成2年11月26日判決)。 |
| 身元保証人への請求 | 身元保証ニ関スル法律、民法465条の2 | 身元保証契約は期間の上限(5年)と裁判所による責任の制限がある。2020年施行の改正民法により、極度額の定めがない個人の根保証契約は無効。 |
| 営業秘密の持出し | 不正競争防止法2条1項4号〜10号、21条 | 秘密管理性・有用性・非公知性を満たす情報の不正取得・使用は差止・損害賠償の対象となり、刑事罰もある。 |
法令の内容は2026年9月時点のものです。刑法の懲役・禁錮は2025年6月から拘禁刑に一本化されています。
横領・不正対応で当事務所が選ばれる理由
被害を受けた会社の側に立ち、回収と組織の立て直しの両方を目的として対応します。
会計の専門家が事務所内にいる
税理士が在籍し、帳簿・仕訳・銀行取引の分析による被害額の確定、横領損失の税務処理、再発防止のための経理体制の見直しまで、弁護士と一体で対応します。
回収・労務・刑事を一つの戦略で
返還請求、懲戒処分、刑事告訴は、進める順序と組合せで回収額が変わります。企業側の紛争解決と労務の実務を踏まえた弁護士が、全体を一つの戦略として設計します。
解決後の体制づくりまで
横領は、職務分掌と承認権限の不備、内部通報の仕組みの欠如から生じます。当事務所は内部統制と内部通報窓口の整備を取扱分野とし、顧問弁護士として再発防止を継続的に支援します。
よくあるご相談例
法人・事業者から実際に多くいただく相談の類型と、当事務所の対応の考え方です。
経理担当者が数年にわたり会社口座から自分の口座に送金していたことが、税理士の指摘で判明した。
銀行取引明細と仕訳を突合して全期間の被害額を確定し、本人の財産を仮差押えしたうえで事情聴取を行い、弁済合意を公正証書化します。時効の管理と刑事告訴の対象期間も整理します。
営業担当者が顧客から集金した現金を入金していない。顧客には「支払済み」と言われている。
顧客への確認と領収書の照合で被害額を特定し、顧客への説明と信用回復を優先しつつ、本人への請求と処分を進めます。顧客との関係を損なわない連絡の仕方を設計します。
購買担当者が特定の仕入先から個人的にリベートを受け取っている噂がある。証拠はない。
発注データと相見積りの分析、仕入先の変遷、担当者の生活状況から水面下で調査を行い、証拠の見込みが立った段階で事情聴取に移ります。仕入先への損害賠償請求も検討します。
横領を認めた従業員に資力がなく、「分割で返す」と言っているが信用できない。
親族による連帯保証、給与からの合意相殺、強制執行認諾文言付き公正証書、期限の利益喪失条項を組み合わせ、退職後や転職後も回収を続けられる合意にします。
共同経営者である取締役が会社資金を関連会社に流している。
取締役会・株主総会での解任、任務懈怠責任の追及、特別背任での刑事告訴、関連会社への請求を、株主構成と経営の継続性を踏まえて設計します。
横領した従業員を懲戒解雇したところ、不当解雇だとして労働審判を申し立てられた。
横領の証拠と処分手続の相当性を整理して会社側の代理人として対応します。あわせて、今後の処分手続を争われない形に整えます。
よくあるご質問
横領・不正の対応について、経営者の方からよくいただく質問です。
横領の疑いがある段階で、本人に話す前に相談してもよいですか。
はい。本人に気付かれる前の段階でご相談いただくのが最善です。本人が証拠を消したり財産を隠したりする前に、証拠の保全と調査の方針を決め、そのうえで事情聴取に臨むことで、返還請求・懲戒解雇・刑事告訴のすべてが進めやすくなります。
横領した従業員に資力がない場合、回収はあきらめるしかありませんか。
いいえ。分割弁済の合意を公正証書にして将来の給与や財産に強制執行できるようにする、転職先の給与を差し押さえる、親族による保証や身元保証人への請求を検討する、不動産や預金を仮差押えするなど、資力に応じた回収の手段があります。回収の見込みを初期に見立てたうえで手段を選びます。
横領した従業員を直ちに懲戒解雇できますか。
横領は懲戒解雇事由に該当し得ますが、就業規則の根拠、証拠に基づく事実認定、本人への弁明の機会、手続の相当性を欠くと解雇が無効とされるおそれがあります。解雇予告手当を支払わない場合は労働基準監督署の解雇予告除外認定が必要です。処分の前にご相談ください。
刑事告訴をすると、お金は返ってきますか。
刑事告訴は処罰を求める手続であり、それ自体で返還を命じるものではありません。もっとも、起訴・実刑を避けたい本人や家族が示談による弁済を申し出ることは多く、民事の返還請求と刑事告訴を並行して進めることが回収の実効性を高めます。
業務上横領の時効は何年ですか。
刑事の公訴時効は業務上横領罪(刑法253条)について7年です。民事の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年(不法行為)、不当利得返還請求権は権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかります。発覚が遅れた長期の横領では、時効の管理が回収額を左右します。
横領された金額は税務上どう処理しますか。
横領による損失は原則として損金に算入できますが、同時に本人に対する損害賠償請求権を益金に計上する扱いが問題になります。回収可能性に応じた処理を、在籍する税理士と共に整理します。
本人に気付かれずに弁護士費用を支払うことはできますか。
はい。請求書の宛先や件名、送付方法を調整し、経理担当者が横領の疑いの対象である場合にも本人の目に触れない形で対応します。ご相談時にお申し出ください。
顧問契約をしていなくても依頼できますか。
はい。法人・事業者からのご相談であれば、顧問契約の有無にかかわらずお受けします。初回相談は無料で、調査・回収・処分の見通しと費用をご説明したうえでご依頼いただけます。解決後に顧問契約へ移行し、再発防止を継続的に支援することも可能です。
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