Column

採用しても従業員が定着しない企業の4つの特徴と労働法上のリスク ― 求人票と労働条件の乖離(職業安定法5条の3・労働基準法15条2項の即時解除と帰郷旅費)、長時間労働と割増賃金の不払い(3年の遡及請求・付加金・上限規制)、ハラスメントの放置(労働施策総合推進法31条の措置義務・勧告と企業名公表・安全配慮義務)、評価・賃金決定の不透明(労働契約法8〜10条・労働基準法91条)と、定着と紛争予防を同時に実現する「明示・記録・仕組み」

「採用に費用をかけても人が定着しない」という相談を、当事務所は経営者から頻繁に受けます。その際、原因を「最近の若者の根性のなさ」に求める見方がしばしば示されますが、統計はこれを支持しません。厚生労働省の集計によれば、令和4年3月に大学を卒業して就職した者の3年以内離職率は33.8%ですが、事業所規模別にみると、従業員5人未満の事業所では57.5%、5〜29人では52.0%、30〜99人では41.9%であるのに対し、1,000人以上の事業所では27.0%にとどまります。離職率が個人の資質のみで決まるのであれば、事業所規模によってこれほどの差は生じません。離職の多寡は、相当程度、企業側の構造によって決まっているとみるべきです。

本稿では、採用しても従業員が定着しない企業に共通する4つの特徴――①求人票と実際の労働条件の乖離、②長時間労働と割増賃金の不払い、③ハラスメントの放置、④評価・賃金決定の不透明――を、それぞれに対応する労働法上のリスクとあわせて整理します。重要なのは、これら4つの特徴が、離職の原因であると同時に、退職者から請求を受け、労働審判や訴訟で企業が敗れる原因でもあるという点です。退職した従業員は単に去るのではなく、労働契約の即時解除、3年分の割増賃金請求、損害賠償請求、不利益変更の無効主張という形で企業に戻ってきます。従業員の定着と紛争の予防は、同じ施策で達成できます。なお、帝国データバンクの調査では、2025年度の「人手不足倒産」は441件と過去最多を更新し、うち従業員の退職が引き金となった「従業員退職型」は118件と年度で初めて100件を超えました。従業員の離職は、もはや採用コストの問題ではなく、事業継続の問題です。

1 求人票と実際の労働条件が乖離している企業

(1)典型的な乖離と早期離職

入社後早期に離職する従業員の典型的な理由は、「聞いていた条件と違う」というものです。当事務所が関与した事案でも、求人票に「月給25万円」と記載しながら、実際には固定残業代を含んだ金額であったもの、面接時に見せた部署とは異なる部署に配属したもの、過去の条件を更新せず掲載し続けていたものが見られます。経営者に悪意がない場合も多いのですが、賃金・労働時間・就業場所は生活に直結する事項であり、入口で生じた不信は、その後の小さな不満を離職へと増幅させます。

(2)募集段階と契約締結段階の明示義務

労働条件の明示は、募集段階と労働契約締結段階の二段階で義務づけられています。募集段階では、職業安定法5条の3第1項により、労働者の募集を行う者は、募集に応じようとする者に対し、従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、募集時に明示した条件を変更して契約を締結する場合には、変更内容を明示する義務があります(同条3項)。虚偽の条件を提示して労働者の募集を行った者には、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(同法65条9号)。

契約締結段階では、労働基準法15条1項により、使用者は賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、賃金・労働時間等の主要事項は書面(労働者が希望した場合は電子メール等)で明示する必要があります(労働基準法施行規則5条3項・4項)。2024年4月1日からは、明示事項に「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」が追加され(同規則5条1項1号の3)、将来の配置転換の可能性も含めて書面で示すことが求められています。同規則5条2項は、明示すべき労働条件を「事実と異なるものとしてはならない」と明記しています。

(3)明示条件が事実と相違した場合の法的効果

明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は労働契約を即時に解除することができます(労働基準法15条2項)。期間の定めのない雇用における2週間の予告期間(民法627条1項)は適用されず、使用者に引き留める法的手段はありません。さらに、就業のために住居を変更した労働者が契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければなりません(同条3項)。採用コストをかけて迎えた従業員から、入社直後に「条件が違うので本日限りで辞める。帰郷の旅費も負担してほしい」と告げられ、法的に拒めないという事態が、入口の虚偽の帰結です。

固定残業代については、求人票・労働条件通知書において「何時間分・いくら」を明示し、通常の労働時間の賃金部分と割増賃金部分が判別できる状態にしておく必要があります。判別できない固定残業代は割増賃金の支払いとして認められず、固定残業代を含む全額を基礎として割増賃金を再計算した結果、多額の未払いが生じるリスクがあります。

(4)実務対応

第一に、求人票、労働条件通知書、実際の運用の三者を突き合わせ、賃金(固定残業代の時間数と金額を含む)、所定労働時間、就業場所・業務とその変更の範囲、試用期間、賞与・昇給の有無について乖離がないかを点検します。第二に、面接では繁忙期の残業や初年度の配属など不利な事情も含めて説明し、記録を残します。第三に、入社初日に労働条件通知書を本人と読み合わせ、質疑の時間を設けます。この運用は、後日「聞いていない」と争われた場合の立証にも資します。

2 長時間労働が常態化し、割増賃金が適正に支払われていない企業

(1)「管理していない」ことの帰結

中小企業・スタートアップにおいて最も頻繁に見られるのが、長時間労働が常態化し、割増賃金が適正に支払われていない状態です。経営者が勤怠記録を意図的に削るケースは論外ですが、実務上多いのは、「アットホーム」な社風のもとで「この分は請求しないよね」と暗黙に処理しているケースと、労働時間をそもそも把握していないケースです。当事務所が聞き及んだ事案では、就業時間中の外出・休憩を自由とする社風の企業で、遅くまで残っていた従業員の時間を「日中休んでいた分」として会社側が調整していたところ、従業員から未払いの指摘を受けました。会社側には従業員が日中不在であったことを示す記録がなく、残っていたのはシステムのログイン記録のみでした。この場合、ログイン記録が労働時間の立証資料となり、会社側は反証できません。

労働時間の状況の把握は、労働安全衛生法66条の8の3により事業者の義務とされ、厚生労働省のガイドラインは、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認・記録することを原則としています。自己申告制は例外的な方法であり、実態との乖離の調査等の措置が求められます。労働時間の記録を含む労働関係に関する重要な書類は5年間(当分の間3年間)の保存義務があります(労働基準法109条・附則143条1項)。

(2)退職者からの請求――3年の遡及、付加金、連鎖

賃金請求権の消滅時効期間は5年とされ、当分の間は3年です(労働基準法115条・附則143条3項)。在職中は申し出なかった従業員が、退職後に弁護士に相談し、3年分を一括して請求する事例は実務上極めて多く、毎月の未払いが数万円であっても1人あたり100万円単位となることは珍しくありません。訴訟においては、裁判所は未払いの割増賃金と同一額の付加金の支払いを命じることができ(同法114条・附則143条2項)、最大で請求額の2倍の支払いとなります。さらに、1人の請求が認められると、同じ働き方をしていた他の退職者・在職者に波及し、一度に数千万円の支払いを要した事案も当事務所は経験しています。離職率の高い企業は、潜在的な請求者を毎年社外に送り出していることになります。

(3)時間外労働の上限規制

時間外労働は、36協定を締結・届出した場合でも、原則として月45時間・年360時間が限度であり、臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、2〜6か月平均80時間以内(同)とされ、これに違反した使用者には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(労働基準法36条4項〜6項・119条1号)。「払えないから削る」という発想ではなく、業務量と価格設定を見直して時間外労働そのものを減らすことが、法的にも経営的にも唯一の持続可能な対応です。

(4)労働条件が離職理由の中心にあること

厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、2024年の離職率は14.2%であり、転職入職者が前職を辞めた理由として、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%で「その他の個人的理由」を除いて最多、男性では「給料等収入が少なかった」が10.1%で定年等を除いて2番目に多い理由となっています。労働時間と賃金への不満は、離職理由の中心に位置しています。求人媒体や口コミサイトを通じて他社の条件が可視化された現在、「当社ではこれが普通」という説明は通用しません。

3 ハラスメントを放置している企業

(1)中小企業に固有の構造

中小企業では、業務遂行能力の高い古参の従業員に権限と業務が集中しがちであり、「この人がいないと回らない」という状態が、その従業員による部下への威圧的な言動を経営者が黙認する構造を生みます。この構造の下では、言動の対象となった従業員のみならず、それを目撃した周囲の従業員が「次は自分かもしれない」と感じて連鎖的に離職する傾向が顕著です。厚生労働省の「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(2026年7月7日公表)によれば、総合労働相談件数は119万8,010件で18年連続100万件超、民事上の個別労働紛争相談のうち「いじめ・嫌がらせ」は55,614件で14年連続の最多です。

(2)措置義務と行政措置

「厳しい指導とパワーハラスメントの線引きは難しい」という指摘は正当ですが、線引きが難しいことは何もしないことの理由にはなりません。事業主は、職場における優越的な関係を背景とした言動により労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じる義務を負います(労働施策総合推進法31条1項。2026年10月1日施行の改正前は30条の2)。この義務は、2022年4月1日から中小企業にも適用されています。厚生労働大臣の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、事業主の方針の明確化と周知・啓発、相談窓口の設置と周知、事後の迅速かつ適切な対応、相談者等のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止を講ずべき措置として定めており、相談窓口を設けていない企業は、この時点で法令違反の状態にあります。厚生労働大臣は、違反事業主に対して助言・指導・勧告を行うことができ、勧告に従わない場合はその旨を公表することができます(同法42条)。また報告を求められた事業主が報告をせず、または虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料が定められています(同法45条1項・51条)。

(3)安全配慮義務と使用者責任

ハラスメントにより被害者が精神疾患を発症した場合、使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務(労働契約法5条)に違反したとして、債務不履行責任(民法415条)を問われ、加害者の行為について使用者責任(民法715条)を負う可能性もあります。ハラスメントの存在を認識しながら放置していた事実は、企業の責任を重くする方向に働きます。離職に加え、損害賠償、労災認定、企業の評判低下が同時に生じるのがハラスメント放置の帰結であり、企業の存続を左右し得る問題です。

(4)実務対応とカスタマーハラスメント対策義務

最低限、①就業規則にハラスメントの禁止と懲戒処分の規定を置くこと、②相談窓口を定めて全従業員に周知すること(社内担当者に加え、弁護士等の社外窓口を併置することが望ましい)、③相談を受けた場合に必ず事実確認を行い、調査結果と対応を記録に残すこと、の3点を整備します。経営者自身が「ハラスメントを許容しない」旨を自らの言葉で表明することが、最も実効的な抑止となります。なお、2026年10月1日からは、顧客等の言動(カスタマーハラスメント)により労働者の就業環境が害されることのないよう、相談体制の整備等の措置を講じることも事業主の義務となりました(労働施策総合推進法33条1項。令和7年法律第63号)。従業員を守る姿勢を制度として示すことが、定着に直結します。

4 評価と賃金の決定が不透明な企業

(1)「何を頑張れば給料が上がるか」を説明できない

当事務所が経営者に「何を達成すれば昇給するのか」「賞与はどのように決めているのか」と尋ねると、明確に答えられない方が大半です。「頑張っていそうな者に多く出している」「誰を管理職にするかは先代が決めていたので理由は分からない」という回答は珍しくありません。昇進基準も賞与基準もなく経営者の裁量のみで決まる組織では、成果を上げた者と上げていない者の処遇が接近し、自己アピールに長けた者が昇進する事態が生じます。「努力が評価されない」という不満は最も蓄積しやすく、転職市場で選択肢の多い優秀な人材から順に離職します。反対に、定着率の高い企業では、「このタスクを全て遂行できれば昇給」「この水準に達すれば支店長候補としてインセンティブを付与」というように、評価と処遇の対応関係が明確に設計されています。

(2)不透明な処遇が法的紛争に転化する局面

不透明なだけでも離職の原因となりますが、より深刻なのは、経営者の裁量で理由を説明できない減給・降格を行っている企業です。当事務所が関与した事案では、先代が約30年にわたり処遇を独断で決定してきた企業において、「なぜこの者がこの職位にあるのか」「この手当はどのような根拠で支給されているのか」を誰も説明できず、経営者の交代を契機に、不満を抱えていた従業員が不利益な取扱いを受けたとして訴訟を提起しました。処遇の理由を問われても「先代が決めたから」以外の説明ができない企業を、法的に防御することはできません。

法律上、労働契約の内容である労働条件の変更は、労働者と使用者の合意によることが原則であり(労働契約法8条)、就業規則の変更により労働条件を労働者の不利益に変更することは、周知と変更の合理性(不利益の程度、必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉状況等)が認められる場合を除いて許されません(同法9条・10条)。懲戒としての減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないとされ(労働基準法91条)、懲戒処分は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない場合には無効です(労働契約法15条)。人事権の行使としての降格・降給も、権利濫用(同法3条5項)と評価されれば無効となり、差額賃金の支払義務が生じます。評価の根拠を記録で示せない企業は、これらの争いにおいて反論の材料を持ちません。

(3)実務対応

精緻な人事制度を直ちに構築する必要はありません。第一に、「どのような能力・成果を持つ者の処遇を上げるのか」「どのような人材を将来の幹部とするのか」を経営者自身が書き出し、A4判1枚程度で全従業員に示します。第二に、年2回程度、短時間でも評価面談を実施し、評価の理由と本人の反応を記録します。この記録の蓄積は、従業員にとっては処遇の納得感を、企業にとっては処遇の合理性を裏付ける証拠を、同時に生み出します。第三に、賃金の決定・計算・支払の方法と昇給に関する事項は就業規則の必要記載事項であり(労働基準法89条2号)、労働条件通知書の明示事項でもあるため(同規則5条1項3号)、就業規則・賃金規程と実際の運用を一致させます。

5 離職の原因は法的リスクの一覧表である

以上の4つの特徴は、いずれも従業員が離職する原因であると同時に、退職者から法的請求を受ける原因です。求人票と現実の乖離は即時解除と旅費負担に、長時間労働と割増賃金の不払いは3年分の請求と付加金に、ハラスメントの放置は損害賠償と行政措置に、不透明な処遇は不利益変更の無効と差額賃金の請求に、それぞれ直結しています。対策もまた共通しており、「明示・記録・仕組み」の3点に集約されます。労働条件を正確に明示し、労働時間と評価を客観的に記録し、相談窓口と評価基準を制度として整えることは、定着率の改善と紛争の予防を同時に実現します。採用費を投じる前に、まずこの4点を点検することが、人手不足時代における法務の優先順位です。

企業が点検すべき事項

  • ① 求人票・求人媒体の記載、労働条件通知書、実際の運用の三者に乖離がないか(賃金、固定残業代の時間数と金額、所定労働時間、就業場所・業務とその変更の範囲、試用期間、賞与・昇給の有無)
  • ② 募集時に明示した条件を変更して契約を締結する場合に、変更内容を明示する運用があるか(職業安定法5条の3第3項)
  • ③ 労働条件通知書に2024年4月以降の必要記載事項(就業場所・業務の変更の範囲等)が反映され、入社時に本人と内容を確認する手順があるか
  • ④ 労働時間をタイムカード・勤怠システム等の客観的記録で把握し、休憩・外出を含めて記録が実態と一致しているか。自己申告制のみに依拠していないか
  • ⑤ 割増賃金が実際の労働時間に基づき全額支払われているか。36協定の締結・届出と上限規制(月45時間・年360時間等)が遵守されているか
  • ⑥ 就業規則にハラスメントの禁止と懲戒の規定があり、相談窓口(社内・社外)が設置・周知され、相談への対応と記録の手順が定められているか(労働施策総合推進法31条)
  • ⑦ カスタマーハラスメントに関する相談体制と対応方針が整備されているか(同法33条、2026年10月1日施行)
  • ⑧ 昇給・賞与・昇進の基準が文書化され、全従業員に示されているか。評価面談の実施と記録の運用があるか
  • ⑨ 過去に行った減給・降格について、理由と根拠を記録で説明できるか。労働契約法8〜10条、労働基準法91条に抵触するものがないか
  • ⑩ 退職者の人数と退職理由を把握し、未払賃金・ハラスメント等の潜在的請求の有無を事前に点検しているか

よくあるご質問

Q. 求人票に記載した条件より低い条件で雇用契約を結ぶことは違法ですか。

A. 求人票の記載が直ちに労働契約の内容となるわけではありませんが、募集時に明示した条件を変更して契約を締結する場合には、変更内容を求職者に明示する義務があります(職業安定法5条の3第3項)。虚偽の条件を提示して募集を行えば罰則の対象です(同法65条9号)。また、労働契約締結時に明示した条件が事実と相違すれば、労働者は即時解除ができ、14日以内の帰郷旅費を負担する義務が生じます(労働基準法15条2項・3項)。求人票の条件を変更する場合は、面接時に変更内容と理由を説明し、労働条件通知書に正確に反映して本人の確認を得てください。

Q. 固定残業代を含めて「月給25万円」と求人票に記載していました。問題がありますか。

A. 問題があります。固定残業代は、基本給と区別し、「何時間分・いくら」を明示する必要があります。区別できない場合、固定残業代は割増賃金の支払いと認められず、25万円全額を基礎として割増賃金を再計算した未払いが生じるおそれがあります。募集時の明示義務(職業安定法5条の3)との関係でも、固定残業代の時間数・金額・超過分の追加支給の有無を記載することが求められます。求人票・労働条件通知書・賃金規程の記載をそろえ、超過した時間外労働については別途支払う運用を徹底してください。

Q. 就業時間中の外出や休憩を自由にしている社風です。残業代はどのように計算すべきですか。

A. 労働時間の状況を客観的に把握することは使用者の義務であり(労働安全衛生法66条の8の3)、休憩・外出の時間も含めて記録を残さなければ、始業から終業までの在社時間またはシステムのログイン記録が労働時間と認定されるリスクがあります。自由な社風を維持する場合でも、休憩・外出の開始終了を本人が記録する仕組み(勤怠システムの打刻等)を導入し、記録に基づいて割増賃金を計算してください。「日中休んでいた分」を会社側の推測で差し引く運用は、紛争時に立証できず、未払いと認定されます。

Q. 過去に、理由を十分に説明せずに減給・降格を行った従業員がいます。どのように対応すべきですか。

A. まず、当該処遇の根拠(就業規則・賃金規程上の根拠、評価の記録、本人への説明の有無)を確認してください。合意も就業規則上の根拠もない減給は労働契約法8条・9条に反して無効となり、差額賃金の支払義務が生じる可能性が高く、懲戒としての減給であれば労働基準法91条の限度と労働契約法15条の相当性も問題となります。賃金請求権の時効は当分の間3年です(労働基準法115条・附則143条3項)。是正が必要な場合は、本人との協議により合意で解決することが望ましく、今後は評価基準の文書化と面談記録により、処遇変更の根拠を事前に残す運用に切り替えてください。

まとめ

採用しても従業員が定着しない企業には、①求人票と実際の労働条件の乖離、②長時間労働と割増賃金の不払い、③ハラスメントの放置、④評価・賃金決定の不透明という4つの特徴が共通して見られます。これらは離職の原因であると同時に、労働基準法15条2項の即時解除、3年分の割増賃金請求と付加金、安全配慮義務違反による損害賠償と行政措置、労働契約法8〜10条に基づく不利益変更の無効という法的リスクに直結しています。対策は「明示・記録・仕組み」に集約され、労働条件の正確な明示、労働時間と評価の客観的記録、相談窓口と評価基準の制度化は、定着と紛争予防を同時に実現します。当事務所では、求人票・労働条件通知書の点検、割増賃金リスクの診断、ハラスメント相談窓口の外部受託、評価・賃金規程の整備を、顧問契約に基づき継続的に支援しています。退職者1人からの請求が数百万円、連鎖すれば数千万円に達する時代です。「当社の求人票に問題がないか」という段階のご相談から承っています。

参考資料

関連コラム

本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

← コラム一覧へ戻る

求人票・労働条件通知書の点検、固定残業代と割増賃金の未払リスクの診断、労働時間管理体制の整備、ハラスメント相談窓口の外部受託、評価・賃金規程の整備、退職者からの請求への対応、そして「当社の求人票に問題がないか」という段階のご相談を承っております。

電話 — 平日 10:30 – 17:00 03 - 6824 - 4639

メール でのお問い合わせは 24 時間受付