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業務委託契約の労働者性と契約打ち切りのリスク ― 労働基準法9条と昭和60年労働基準法研究会報告の判断要素、横浜南労基署長事件・INAXメンテナンス事件、フリーランス法16条の30日前予告義務と勧告・公表、解雇への転化(労働契約法16条)とバックペイ・未払残業代3年・社会保険料2年の遡及、契約終了合意書の清算条項と「自由な意思」

「社員を雇うのはハードルが高い」「社会保険料の負担を避けたい」「人員を柔軟に調整したい」といった理由から、実態としては従業員と変わらない働き方をしている人を業務委託契約で受け入れている中小企業は少なくありません。そして多くの経営者が、業務委託であれば雇用より容易に関係を終了できると考えています。しかし、労働基準法上の労働者に当たるかどうかは契約の名称ではなく働き方の実態で判断されるため、「ほぼ社員」の業務委託を一方的に打ち切った場合、その契約終了は法律上「解雇」と評価され、解雇無効に伴う賃金の支払(バックペイ)、未払残業代、社会保険料の遡及といった負担が一度に顕在化します。

さらに、2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律。以下「フリーランス法」)により、実態として本当に業務委託である相手に対しても、6か月以上の継続的業務委託を解除・不更新とする場合には30日前の予告等が義務づけられ、違反には勧告と公表という制裁が現実に運用されています。本稿では、①労働者性の判断基準と最高裁判例、②フリーランス法上の義務と執行状況、③「ほぼ社員」の業務委託を一方的に打ち切った場合の法的帰結、④契約を終了させる場合の実務と平時の点検事項を整理し、企業が点検すべき事項とFAQを示します。

1 労働者性は契約の名称ではなく実態で判断される

(1)労働基準法9条と厚生労働省の整理

労働基準法9条は、労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。この定義に契約の名称は一切関係がなく、厚生労働省も、請負契約・委任契約・業務委託契約といった契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて労働者性を判断するという立場を明示しています。当事者双方が業務委託契約書に署名し、本人が業務委託であることに同意していたとしても、それ自体は労働者性を否定する根拠にはなりません。労働法が強行法規として労働者を保護する趣旨は、契約形式の選択によって保護を潜脱されることを防ぐ点にあるからです。

(2)昭和60年労働基準法研究会報告の判断要素

労働者性の具体的な判断基準は、昭和60年12月19日の労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)が示した枠組みが、現在も裁判例と行政実務の双方で用いられています。同報告は、「使用される=指揮監督下の労働」と「賃金支払=報酬の労務対償性」を総称して「使用従属性」と呼び、次の要素により判断するとしています。

  • 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無(断る自由がなければ指揮監督関係を推認させる重要な要素)
  • 業務遂行上の指揮監督の有無(業務の内容・遂行方法に対する具体的な指揮命令。通常注文者が行う程度の指示にとどまる場合は該当しない)
  • 拘束性の有無(勤務場所・勤務時間が指定され管理されているか。業務の性質上必然的に指定される場合との見極めが必要)
  • 代替性の有無(本人に代わって他の者が労務を提供することや補助者の使用が認められていれば、指揮監督関係を否定する要素)
  • 報酬の労務対償性(時間給を基礎とする計算、欠勤控除、残業手当の支給等、一定時間の労務提供への対価と評価されれば使用従属性を補強)

これらで判断が困難な限界的事例については、「事業者性の有無」(機械・器具の負担関係、報酬の額)、「専属性の程度」(他社の業務に従事することの制約、報酬の生活保障的要素)、その他(採用過程、源泉徴収、服務規律の適用等)を補強要素として総合判断するとされています。経営者が自社の業務委託契約を点検する際は、上記5要素のうち何個に当てはまるかを数えることが実務上の出発点になります。

(3)最高裁判例 ― 労働者性が否定された例と肯定された例

労働者性が否定された代表例が、最高裁平成8年11月28日第一小法廷判決(横浜南労働基準監督署長事件、平成7年(行ツ)第65号)です。自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手について、最高裁は、業務用機材であるトラックを所有し自己の危険と計算の下に業務に従事していたこと、会社は運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品・運送先・納入時刻の指示をしていた以外には特段の指揮監督を行っていなかったこと、時間的・場所的拘束の程度も一般の従業員と比較してはるかに緩やかであったことから、専属的に業務に携わり運送係の指示を拒否することができなかった等の事情を考慮しても、労働基準法および労働者災害補償保険法上の労働者には当たらないと判断しました。

他方、労働者性が肯定された代表例が、最高裁平成23年4月12日第三小法廷判決(INAXメンテナンス事件、平成21年(行ヒ)第473号)です。住宅設備機器の修理補修を個人業務委託契約で行うカスタマーエンジニアについて、最高裁は、会社が約590人のCEを地域に割り振り業務日・休日を指定して事業に不可欠な労働力として組織に組み入れていたこと、契約内容を会社が一方的に決定していたこと、報酬が労務提供の対価といえること、依頼の承諾拒否の割合が1%弱で基本的に依頼に応じる関係にあったこと、業務日の午前8時30分から午後7時までは発注連絡を受ける体制とされ、制服を着用し、作業手順・接客態度を定めたマニュアルに従って業務を遂行していたことなどから、労働組合法上の労働者に当たると判断し、団体交渉の拒否を不当労働行為と認めました。なお、労働組合法上の労働者は労働基準法上の労働者より広い概念と理解されていますが、組織への組み入れ・諾否の自由の欠如・指揮監督と時間的場所的拘束という事実関係は、労働基準法上の労働者性の判断においても中核となる要素です。「業務委託」という名称であっても、会社の組織に組み込まれ、依頼を断れず、マニュアルと指示に従って働く人は法律上の労働者と評価される、という構造を示す判例といえます。

2 「本当の業務委託」であっても生じる義務 ― フリーランス法

(1)30日前予告と理由開示の義務(フリーランス法16条)

実態として業務委託である相手については、契約どおりに関係を終了させることができます。もっとも、フリーランス法は、従業員を使用する発注事業者(特定業務委託事業者)が、従業員を使用しない個人等(特定受託事業者)との間で継続的業務委託(政令で定める期間=6か月以上)に係る契約を解除する場合(契約期間満了後に更新しない場合を含む)には、少なくとも30日前までに予告しなければならないと定めています(16条1項)。また、予告の日から契約満了日までの間に特定受託事業者が解除の理由の開示を請求した場合には、遅滞なく開示しなければなりません(同条2項)。「業務委託だから明日から来なくていい」という対応は、相手が本当のフリーランスであっても、契約上の債務不履行の問題とは別に、法律上の義務違反となります。

(2)明示義務・支払期日と執行の仕組み

フリーランス法はこのほか、業務委託をした場合に給付の内容・報酬の額・支払期日等を直ちに書面または電磁的方法で明示する義務(3条1項)や、給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日の設定と期日内の支払(4条)を定めています。違反に対しては公正取引委員会による勧告(8条)、勧告に従わない場合の命令と公表(9条)、命令違反に対する50万円以下の罰金(24条。25条により法人にも科される)という段階的な執行の仕組みが設けられており、実務上は勧告の段階で公正取引委員会のウェブサイトに事業者名と違反事実が掲載されています。

公正取引委員会の公表によれば、令和7年度のフリーランス法に基づく勧告は10件、指導は1,542件、フリーランス・トラブル110番への相談は13,400件に上りました。令和8年度に入っても勧告は続いており、2026年6月11日には株式会社KADOKAWAが取引条件の明示義務(3条1項)と期日における報酬支払義務(4条5項)の違反で、同年9月2日には日本郵便株式会社が、167名の特定受託事業者に取引条件を明示せず、140名に支払期日を定めないまま報酬を支払っていなかったとして、それぞれ勧告を受けています。発注書1枚の不備で大企業の名前が公表される運用が定着しており、中小企業であっても「知らなかった」では済まない状況です。

3 「ほぼ社員」の業務委託を一方的に打ち切った場合の法的帰結

(1)契約終了が「解雇」と評価される(労働契約法16条・労働基準法20条)

業務委託の名称で受け入れていた人の労働者性が認められた場合、会社が「契約終了」と考えていた行為は、法律上は労働契約の解約、すなわち解雇と評価されます。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には権利濫用として無効です(労働契約法16条)。業務委託を前提に行った契約打ち切りには、通常、解雇の有効性を基礎づける事実の積み重ね(注意指導の記録、改善機会の付与、処分の段階性等)が存在しないため、解雇が有効と認められる可能性は低いといわざるを得ません。解雇が無効であれば労働契約は存続しており、会社は、就労していない期間についても、使用者の責めに帰すべき事由による就労不能として賃金の支払義務を負います(いわゆるバックペイ)。紛争が1年続けば1年分の賃金相当額が累積します。加えて、30日前の解雇予告をしていなければ、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の問題も生じます(労働基準法20条)。

(2)遡及的に顕在化する負担 ― 未払残業代・社会保険料・労災

労働者性が認められることの影響は、契約終了の時点にとどまりません。それまで業務委託として扱っていた期間についても労働者であったことになるため、法定労働時間を超える労働に対する割増賃金(労働基準法37条)が未払いとなります。業務委託として扱っていた以上、労働時間の管理はされておらず、残業代の支払も想定されていないのが通常ですが、本人がメールの送信記録や入退室記録等により在社時間を立証すれば、会社は支払を免れません。賃金請求権の消滅時効は、当分の間3年とされています(労働基準法115条・附則143条3項)。また、社会保険の被保険者資格が遡って認められれば、厚生年金保険料と健康保険料について、保険料徴収権の時効である2年分(厚生年金保険法92条1項・健康保険法193条1項)を事業主負担分・本人負担分を合わせて納付することになり、本人負担分を退職後の本人から回収することは現実には困難です。業務中の負傷は労災保険の対象となり、これらの金銭債務には遅延損害金が付加されます。

実務上さらに重要なのは、同種の働き方をしている人が複数いる場合、1人の請求を契機に他の者からも同様の主張がなされやすいことです。年収400万円相当の業務委託5名について1年間紛争が続いただけで、バックペイだけで2,000万円に達し、未払残業代・社会保険料・慰謝料等が加われば、中小企業の経営を直接揺るがす規模になり得ます。「切りやすい」という理由で選んだ業務委託が、結果として雇用していた場合より高額の負担を生むという逆転が、この問題の本質です。

(3)行政の関与 ― 労働基準監督署の労働者性相談窓口

これらは訴訟に至って初めて生じる問題ではありません。厚生労働省は、フリーランス法の施行日である2024年11月1日に合わせて、全国の労働基準監督署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設置しました。契約を打ち切られた側が労働基準監督署に相談すれば、監督署が実態を調査し、労働者性が認められれば労働基準法違反として是正の対象となります。契約書の名称は、ここでも判断の決め手にはなりません。

(4)労働組合法上の労働者性と団体交渉応諾義務

INAXメンテナンス事件が示すとおり、業務委託として扱っていた人が労働組合法上の労働者と認められれば、その人が加入する労働組合からの団体交渉の申入れを正当な理由なく拒むことは不当労働行為となります(労働組合法7条2号)。対等な取引先からの交渉申入れであれば応諾は任意ですが、労働者からの正当な団体交渉申入れには誠実に対応する義務が生じます。フリーランスが加入できる労働組合が存在する現在、「業務委託だと思っていた人」から団体交渉を申し込まれる事態は、現実的なリスクとして想定しておく必要があります。

4 契約を終了させる場合の実務 ― 合意による終了と「自由な意思」

(1)一方的な解除ではなく合意で終了させる

労働者性に疑義のある業務委託との関係をどうしても終了させる必要がある場合、一方的な「解除」の通知ではなく、契約終了の合意書を取り交わす方法が、紛争リスクを最も小さくします。その前提として、フリーランス法16条の30日前予告を行い、終了の理由を書面で示すことが出発点です。理由の開示は請求があった場合の義務ですが、先に示すことで「理由を隠した」という後日の争点を消すことができます。

(2)清算条項

合意書には、合意書に定めるもののほか当事者間に何らの債権債務がないことを相互に確認する清算条項を設けます。この条項があれば、後に「実態は労働者であったから未払残業代を支払え」と主張された場合に、清算済みであると反論する根拠になります。ただし、清算条項は相手方に何を放棄するのかが認識できる形で記載しなければ実効性を欠きます。「未払報酬、割増賃金、解雇予告手当、損害賠償その他名目のいかんを問わず」というように、放棄の対象となり得る請求権を具体的に列挙することが必要です。

(3)口外禁止条項

合意内容や経緯をSNS、同業者、他の業務委託先等に口外しないことを定める条項も実務上は重要です。他の業務委託者に解決金額が伝われば連鎖的な請求を招きかねないからです。もっとも、会社のみが一方的に相手方を拘束する内容、過大な違約金、弁護士・税理士への相談まで禁じるような内容は、その効力を争われる余地があります。会社側も口外しない双方向の条項とし、専門家への相談や法令上必要な開示を例外として明記するのが安全な設計です。

(4)「自由な意思」の裏付け

合意書に署名を得ても、後に「言われるがままに署名しただけである」と主張されれば、合意の効力自体が争われます。最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決(山梨県民信用組合事件)は、賃金・退職金に関する労働者の不利益な同意の有無について、署名押印の有無だけでなく、不利益の内容・程度、同意に至った経緯・態様、事前の情報提供・説明の内容等に照らし、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するかという観点から判断すべきであるとしました。労働者性が争われ得る業務委託との合意についても、この「自由な意思」の法理が類推される前提で準備すべきです。具体的には、①合意書案を交付してから署名まで1週間程度の検討期間を置き、第三者に相談のうえ判断するよう合意書にも明記する、②いつ、誰が、何を説明したかを記録化し、相手方にもメール等で送付する、③30日前予告に不足する期間に相当する報酬など、放棄してもらう権利に見合う解決金を用意する、④終了の理由を書面で示す、という4点が実務上の対策になります。

(5)根本的な対応 ― 実態を契約に合わせるか、雇用に切り替えるか

合意書は「終了させるとき」の対処にすぎません。「ほぼ社員」の業務委託を継続している限り、未払残業代と社会保険料のリスクは毎月積み上がります。業務委託として維持するのであれば、諾否の自由、遂行方法の裁量、時間と場所の自由、成果に連動した報酬を、契約書の文言だけでなく実態として確保する必要があります。それが業務の性質上できないのであれば、正社員または有期雇用契約に切り替え、労働時間管理と社会保険加入を適正化することが、結果として最も低コストの選択になります。

5 平時に点検すべき契約書・運用上の兆候

紛争化した事案で頻繁に見られるのが、業務委託契約書に「勤務時間は9時から18時とする」「甲の上長の指示に従う」といった、自ら労働者性を基礎づける条項が記載されているケースです。インターネット上のひな形を社名だけ変えて使用した結果、契約書自体が相手方の最有力の証拠になっています。また、研修についても、詳細なマニュアルを整備しその遵守を義務づける形態は労働者性を肯定する方向に働き、技能向上のための任意の参考研修であれば業務委託と矛盾しないという整理になります。求人媒体に「業務委託」と表示しながら「勤務時間9時〜17時」「未経験可」と記載している場合、実態は雇用と同じ働かせ方になっている可能性が高く、求人票の記載自体が後日の証拠となり得ます。

企業が点検すべき事項

  1. 業務委託契約を締結している各人について、昭和60年報告の5要素(諾否の自由・遂行方法への指揮監督・時間と場所の拘束・代替性・報酬の時間対応性)に何個該当するかを個別に評価しているか。
  2. 業務委託契約書に「勤務時間」「上長の指示に従う」「欠勤控除」「時間外手当」など労働者性を基礎づける文言が含まれていないか。
  3. 報酬が成果・業務単位ではなく時間単位・月額固定で定められている場合、その合理的理由を説明できるか。
  4. 再委託や補助者の使用が契約上も実態上も認められているか。業務に必要な機器・道具を誰が負担しているか。
  5. 研修・マニュアルが遵守義務を伴うものになっていないか。求人票の記載が業務委託の実態と整合しているか。
  6. フリーランス法3条の取引条件明示(給付内容・報酬額・支払期日等)を発注の都度、書面または電磁的方法で行っているか。支払期日は受領から60日以内か。
  7. 6か月以上の継続的業務委託について、解除・不更新時に30日前予告を行う運用と、理由開示請求への対応手順が定められているか。
  8. 契約終了時に、清算条項・双方向の口外禁止条項を備えた合意書の書式と、検討期間・説明記録・解決金に関する手順が整備されているか。
  9. 労働者性が認められた場合の潜在債務(3年分の割増賃金・2年分の社会保険料・解雇予告手当)を概算し、経営上のリスクとして把握しているか。
  10. 労働組合からの団体交渉申入れ、労働基準監督署の労働者性相談窓口からの照会があった場合の初動(担当者・弁護士への連絡・回答期限の管理)が定められているか。

よくあるご質問

Q. 本人が「業務委託でよい」と納得して契約書に署名しています。それでも労働者と判断されることがありますか。

A. あります。労働基準法上の労働者性は、契約の名称や本人の同意ではなく、働き方の実態(諾否の自由、指揮監督、時間と場所の拘束、代替性、報酬の性質等)によって判断されます。本人が当初は業務委託に同意していても、関係が悪化した後に労働者性を主張することは妨げられず、契約書の署名は労働者性を否定する決め手にはなりません。実態が従業員と変わらないのであれば、契約形式を実態に合わせるか、実態を業務委託に合わせる必要があります。

Q. 業務委託の相手が本当のフリーランスであれば、いつでも契約を打ち切れますか。

A. 契約上の解除事由や期間満了に従って終了させることはできますが、従業員を使用する発注者が6か月以上の継続的業務委託を解除または不更新とする場合には、フリーランス法16条により少なくとも30日前の予告が必要であり、相手方から請求があれば遅滞なく理由を開示しなければなりません。違反は公正取引委員会等の指導・勧告の対象となり、勧告は事業者名とともに公表されています。また、契約書上の解除条項が民法上の債務不履行の要件を満たさないまま行使されれば、損害賠償の問題も生じ得ます。

Q. 業務委託として扱っていた人から未払残業代を請求されました。どこまでさかのぼる必要がありますか。

A. 労働者性が認められる場合、賃金請求権の消滅時効は当分の間3年(労働基準法115条・附則143条3項)であるため、最大3年分の割増賃金が対象になり得ます。労働時間の記録がない場合でも、本人側のメール送信記録や入退室記録等により在社時間が推認されれば、会社が反証できない限り支払を免れないのが実情です。社会保険料については保険料徴収権の時効が2年(厚生年金保険法92条・健康保険法193条)であり、別途、年金事務所による遡及加入の指導が行われることがあります。請求を受けた段階で、労働者性の有無の評価と潜在債務の算定を早期に行うことが必要です。

Q. 労働者性に疑義のある業務委託との契約を、紛争なく終了させるにはどうすればよいですか。

A. 一方的な解除通知ではなく、合意書による終了を目指してください。30日前の予告と理由の書面化を前提に、放棄の対象を具体的に列挙した清算条項と、双方向で例外を明記した口外禁止条項を設け、相手方に1週間程度の検討期間を与えて第三者への相談を促し、説明の内容を記録化し、放棄してもらう権利に見合う解決金を用意することが、最高裁の「自由な意思」の判断枠組みに耐える合意を得るための実務的な方法です。あわせて、同種の働き方をしている他の業務委託者についても、契約形式と実態の見直しを並行して進めることをお勧めします。

まとめ

労働者性は契約の名称ではなく働き方の実態で判断され、諾否の自由・指揮監督・時間と場所の拘束・代替性・報酬の性質という昭和60年報告の要素に当てはまるほど、業務委託の名称にかかわらず法律上の労働者と評価されます。本当の業務委託であっても、フリーランス法により6か月以上の継続的業務委託の解除・不更新には30日前予告と理由開示が義務づけられ、違反は勧告と公表の対象となっています。「ほぼ社員」の業務委託を一方的に打ち切れば、契約終了は解雇と評価されて労働契約法16条により無効となる可能性が高く、バックペイ、解雇予告手当、最大3年分の未払残業代、2年分の社会保険料が遡及して顕在化し、団体交渉応諾義務も生じます。契約を終了させる場合は、30日前予告と理由の書面化を前提に、清算条項と双方向の口外禁止条項を備えた合意書を、検討期間・説明記録・相当な解決金により「自由な意思」の裏付けを伴う形で取り交わすこと、そして根本的には、実態を業務委託に合わせるか雇用に切り替えるかを決断することが必要です。当事務所では、業務委託契約の労働者性診断、契約書の実態に即した改訂、フリーランス法の明示義務・予告義務の運用整備、契約終了時の合意書作成と説明手順の設計、労働基準監督署・労働組合への対応まで、顧問契約の中で継続的に支援しています。

参考資料

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