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スポットワーク(スキマバイト)の直前キャンセルと仲介事業者・利用企業の法的責任 ― タイミーに対する集団訴訟(東京地裁係属中)にみる労働契約の成立時期、休業手当(労働基準法26条)と賃金全額の請求(民法536条2項)、併存的債務引受、利用規約の免責条項の射程、労災保険の適用と利用企業の点検事項

短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働く、いわゆる「スポットワーク」(スキマバイト)は、人手不足への対応策として急速に普及しています。その一方で、求人企業が就労の直前に一方的に契約を解約する、いわゆる「直前キャンセル」をめぐる紛争が顕在化しています。報道によれば、2026年4月21日、スポットワークの仲介アプリ「タイミー」を利用する労働者9名が、直前キャンセルによって得られなかった賃金相当額等の支払いを求めて、求人企業ではなく、アプリを運営する株式会社タイミーを被告とする訴えを東京地方裁判所に提起しました。

この訴訟は、仲介事業者の責任を問うものですが、その前提には、スポットワークにおいて労働契約がいつ成立し、直前キャンセルについて誰がどのような責任を負うのかという問題があります。そして、法令上、第一次的に責任を負うのは、使用者である求人企業です。本稿では、①訴訟の概要、②労働契約の成立時期に関する厚生労働省の整理、③仲介事業者の法的地位と利用規約の免責条項の射程、④スポットワークを利用する企業(使用者)の責任、⑤利用にあたっての費用と社内体制、⑥労働者側の不就労への対応の順に整理し、スポットワークを利用する企業の点検事項を示します。なお、訴訟は本稿の執筆時点において審理中であり、訴訟に関する記述は報道された内容によります。

1 訴訟の概要

(1) 請求の内容

報道によれば、原告は、東京都、愛知県など1都4県に居住する20代から60代の労働者9名です。原告らは、2021年10月から2026年3月までの間に、タイミーのアプリを通じて飲食店等の求人に応募し、就労が決定したものの、いずれも勤務予定日の直前に求人企業の都合で解約され、賃金および交通費を得ることができなかったと主張しています。解約の件数は合計135件とされ、未払賃金等に相当する約102万円と慰謝料約210万円の合計約312万円を請求しています。原告側は、スポットワークの直前キャンセルについて、仲介事業者の責任を正面から問う集団訴訟は全国で初めてであると説明しています。

(2) 原告の主張

報道されている原告の主張は、次のように整理することができます。第一に、求人への応募が完了した時点で、労働者と求人企業との間に労働契約が成立しており、その後の求人企業の都合による解約については、賃金の支払義務が生じる。第二に、タイミーは、求人情報を掲載するにとどまらず、労働条件通知書の発行、賃金の立替払い、勤怠の管理を担い、その対価として求人企業から手数料を得ている。第三に、このような関与の実態に照らせば、タイミーは求人企業の賃金債務を併存的に引き受けており、また、違法な直前キャンセルを防止すべき注意義務を怠った、というものです。

(3) 被告の対応

2026年7月2日に第1回口頭弁論期日が開かれ、タイミーは、請求の棄却を求める答弁書を提出して争う姿勢を示したと報じられています。裁判所の判断は示されておらず、原告の主張が認められるか否かは、現時点では明らかではありません。

2 労働契約の成立時期 ― 厚生労働省の整理

この訴訟の背景には、スポットワークにおける労働契約の成立時期をめぐる整理があります。厚生労働省は、2025年7月4日、スポットワークにおける留意事項をとりまとめた労働者向けおよび使用者向けのリーフレットを公表しました。同リーフレットは、労働契約の成立時期は個別の具体的な状況によるとしたうえで、面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人に労働者が応募した時点で、労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられる、としています。

また、同リーフレットは、労働契約の成立後に事業主の都合で丸1日の休業または仕事の早上がりをさせることとなった場合は、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となり、所定支払日までに休業手当を支払う必要があるとしています。あわせて、契約成立後の解約の事由や期限をあらかじめ定める契約(解約権留保付労働契約)を締結する場合には、その事由が合理的であること、労働者にのみ不利な内容とならないことに留意する必要があり、事業主からの解約の期限は、労働者が別の就労機会を見つける時間的余裕に配慮して設定することが求められる、としています。

タイミーは、同日付けの公表において、従前は、業務当日にQRコードを読み取ってチェックインした時点で労働契約が成立するとの考え方のもとでサービスを運営してきたことを明らかにしたうえで、2025年9月1日から、労働者が求人への応募を完了した時点で解約権留保付労働契約が成立するとの考え方に基づく運営に変更するとしました。変更後は、使用者からの解約は原則としてすることができず、解約可能事由に該当しない限り、休業手当の支払いが必要となります。従前の考え方によれば、就労前の解約は契約成立前の事象となり、賃金は発生しないことになります。今回の訴訟では、この運営方針の変更より前の時期の解約も請求の対象とされています。

3 仲介事業者の法的地位と利用規約

(1) 職業紹介事業者としての地位

職業安定法において「職業紹介」とは、求人および求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることをいい(同法4条1項)、有料の職業紹介事業を行うには、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません(同法30条1項)。タイミーの事業者向け利用規約は、同社のサービスを、職業紹介およびこれに付随する給与計算、給与支払い、源泉徴収票の発行機能の提供等の労務管理支援を行うサービスと定義しています。

職業紹介事業者は、あっせんの結果として成立する雇用契約の当事者ではありません。前記の厚生労働省のリーフレットも、スポットワークは事業主と労働者が直接労働契約を締結するものであり、労働基準法等を守る義務は労働契約を締結した事業主に生じること、労働者と仲介事業者が労働契約を結ぶものではないことを明記しています。賃金の支払義務(労働基準法24条)や労働条件の明示義務(同法15条1項)を負う「使用者」(同法10条)は、求人企業です。

(2) 利用規約の定め

タイミーの労働者向け利用規約は、サービスの紹介によって成立する雇用契約の当事者は登録ユーザーと求人者であるとしたうえで、「弊社は、いかなる意味においても、登録ユーザーに対して雇用主としての責任を負うものではありません」と定めています(第3条)。事業者向けの利用規約にも同趣旨の定めがあります。前記(1)のとおり、この定めは、職業紹介事業者と求人者・求職者との法律関係に沿うものであり、仲介事業者が雇用主としての責任を負わないという限りでは、被告の主張に理由があると考えられます。

(3) 免責条項の射程

もっとも、この条項によって、仲介事業者が負い得る責任のすべてが否定されるわけではありません。第一に、この条項が否定しているのは「雇用主としての責任」です。報道によれば、原告は、タイミーが雇用主であると主張しているのではなく、賃金の支払いを代行し、解約に関するルールを定め、手数料を得ている事業者としての責任を主張しています。雇用主であることを前提としない責任、例えば、債務の引受けに基づく責任や不法行為責任(民法709条)は、この条項が直接に対象とするものではありません。

第二に、利用規約の定めは当事者間の合意であり、その効力には法律上の限界があります。一般に、個人の利用者との間の契約に消費者契約法が適用される場合、事業者の債務不履行または不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効とされます(同法8条1項1号・3号)。また、定型約款の条項のうち、相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。

(4) 併存的債務引受と注意義務

併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担します(民法470条1項)。併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができるほか、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができ、後者の場合は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生じます(同条2項・3項)。

タイミーの現行の労働者向け利用規約は、求人への申込みが完了した場合に、求人情報の内容で解約権留保付きの雇用契約が成立するものとして取り扱うと定めています(第7条)。また、求人企業向けの案内では、労働者への給与の振込はタイミーの立替払いによるとされています。原告の主張は、このような仕組みを根拠に、仲介事業者が賃金債務を引き受けていると構成するものといえます。これに対しては、立替払いは求人企業から委託を受けた支払事務の代行にとどまり、求人企業の賃金債務そのものを負担する趣旨を含まない、との反論が考えられます。いずれの理解が相当かは、規約その他の契約の定めと運用の実態をふまえた契約の解釈の問題であり、裁判所の判断を待つ必要があります。

仲介事業者に雇用主と同一の責任を認めることには、相応の困難があると思われます。他方で、仲介事業者が、契約の成立時期や解約に関するルールを設計し、賃金の支払いの過程にも関与している場合に、その関与の程度に応じた注意義務が認められる余地があるかは、今後の審理の対象となります。この点についての判断は、人材の仲介に限らず、利用者間の取引に深く関与するプラットフォーム型の事業一般に影響を及ぼす可能性があります。自社でこの種の事業を営む企業は、利用規約に「責任を負わない」と定めることによって、関与の実態に応じた責任を当然に免れることはできないことを前提に、サービスを設計する必要があります。

4 スポットワークを利用する企業(使用者)の責任

仲介事業者の責任の有無にかかわらず、直前キャンセルについて法令上の責任を負うのは、使用者である求人企業です。この訴訟の帰すうよりも、スポットワークを利用する企業にとって重要なのは、この点です。

(1) 直前キャンセルと休業手当・賃金

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は、休業期間中、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません(労働基準法26条)。これに違反した者は、30万円以下の罰金に処せられ(同法120条1号)、裁判所は、労働者の請求により、未払金と同一額の付加金の支払いを命ずることができます(同法114条)。

さらに、債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって労務を提供することができなくなったときは、使用者は、賃金の支払いを拒むことができません(民法536条2項)。厚生労働省のリーフレットも、事業主自身の故意、過失等により労働者を休業させることとなった場合は、賃金の全額(休業手当を既に支払っている場合は、これを控除した額)を支払う必要があるとし、また、休業手当の代わりに、その日に約束した賃金の全額を支払うことで差し支えないとしています。来客数の見込み違いや人員計画の変更といった事情は、通常、使用者の側の事情であり、これを理由に就労の直前に解約した場合には、賃金の全額の支払いを求められる可能性があります。

なお、期間の定めのある労働契約について、使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の満了までの間に労働者を解雇することができません(労働契約法17条1項)。解約権を留保する定めを置く場合も、前記2のとおり、その事由の合理性が問われます。

(2) 求人企業に対する請求の例

求人企業自身が請求を受けた例も報じられています。報道によれば、東京簡易裁判所は、2025年12月9日、タイミーを通じて飲食店の求人に応募し就労が決定した労働者が、勤務日の前日に解約されたとして賃金相当額等の支払いを求めた訴訟において、飲食店を運営する会社に対し、請求どおり6,800円の支払いを命じました。この訴訟では、被告が期日に出頭せず、請求原因事実を争わなかったとされており、裁判所が争点について実質的な判断を示したものではありません。しかし、少額であっても、労働者が訴訟を提起する例が現れていること、請求を放置すれば、そのまま支払いを命じられることを示すものといえます。

(3) 賃金の支払い、遅延利息および消滅時効

賃金は、その全額を支払わなければなりません(労働基準法24条1項)。厚生労働省のリーフレットは、労働条件通知書等で示した額を一方的に減額し、または別途支払うとしていた交通費を支払わないことは労働基準法違反となること、事業主の指示による着替え等の準備行為、後始末および待機の時間は労働時間に当たり、これに対する賃金を支払う必要があることを示しています。賃金の振込を仲介事業者が代行している場合であっても、賃金債務を負うのは使用者です。

スポットワークの労働者は、就労した日に退職する労働者です。事業主は、退職した労働者に係る賃金を退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金については、当該支払期日)までに支払わなかった場合、その翌日から支払いをする日までの期間について、年14.6%の遅延利息を支払わなければなりません(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、同法施行令1条)。また、賃金請求権の消滅時効期間は、当分の間、行使することができる時から3年間とされています(労働基準法115条、附則143条3項)。過去の直前キャンセルについても、この期間内のものは、請求を受ける可能性があります。

(4) 労働条件の明示

使用者は、労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。厚生労働省のリーフレットは、労働条件通知書の交付を仲介事業者が代行する場合であっても、交付は事業主の義務であり、適切に交付されているか、内容が適切かを事業主が確認すべきであるとしています。応募の時点で労働契約が成立すると考えられる以上、アプリに掲載した求人の内容が、そのまま労働契約の内容となり得ます。掲載した業務の内容、就業の時間、持ち物等が現場の実態と相違していないかを確認する必要があります。

(5) 労働災害

労働者災害補償保険法は、労働者を使用する事業を適用事業としています(同法3条1項)。スポットワークの労働者を使用するのは求人企業であり、労働者が通勤の途中または就労中に負傷した場合は、就労先の事業について成立する保険関係に基づいて、労災保険給付を受けることになります。仲介事業者を通じて受け入れた労働者であることは、自社の労働災害であることを否定する理由になりません。

事業者は、労働者を雇い入れたときは、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければなりません(労働安全衛生法59条1項)。1日限りの就労であっても同様です。当該事業場での就労の経験がない労働者が、短時間で業務に従事するという条件は、労働災害の防止の観点から特に注意を要します。また、労働者が労働災害等により死亡し、または休業したときは、所轄の労働基準監督署長に報告しなければならず(労働安全衛生規則97条)、報告をせず、または虚偽の報告をすることは、罰則の対象となります(労働安全衛生法100条1項、120条)。

5 利用にあたっての費用と社内体制

タイミーの求人企業向けの案内によれば、求人の掲載は無料であり、労働者に支払う報酬の30%(税抜)のサービス利用料と、労働者1名の稼働ごとに200円(税抜)の振込関連の手数料(同月内の2回目以降の稼働を除く)が発生します。時給1,500円で5時間就労した場合、報酬7,500円に対し、利用料2,250円と手数料200円が加わり、企業の負担は税抜で9,950円、1時間当たり約1,990円となります。直接雇用するアルバイトの時給と同じ感覚で利用すると、原価の見込みに3割を超える差が生じます。

費用に加えて認識しておくべきは、仲介事業者が代行するのは、募集、労働条件通知書の交付、給与計算等の事務であって、使用者としての責任ではないということです。一時的な人手の不足を補う手段として、費用と手続上の負担を理解したうえで利用することには合理性があります。他方、恒常的な人手不足を補うために反復して利用する場合には、多数の労働者を雇い入れているのと同様に、前記4の各責任が累積することになります。求人の掲載および解約の権限を誰が持つのか、解約の判断をどの時点までに行うのか、受入れ時に誰が何を説明するのかを、社内であらかじめ定めておくことが求められます。

6 労働者側の不就労への対応

実務上は、労働者が当日に就労しない、連絡が取れないといった相談も多く寄せられます。しかし、使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはなりません(労働基準法16条)。不就労の場合に一定額を支払わせる旨を自社で定めることは、同条に違反します。現実に生じた損害の賠償を請求すること自体は禁止されていませんが、不就労と損害との因果関係および損害額の立証は容易ではなく、請求額に照らして訴訟によることが合理的である場合は限られます。

したがって、労働者側の不就労には、欠員が業務に重大な支障を及ぼす場合に募集人数に余裕を持たせること、当日の連絡方法を定めておくこと、欠員が生じた場合の代替の手順を定めておくことなど、運用によって備えることになります。使用者による解約には前記4の責任が伴い、労働者の不就労に対しては違約金を定めることができないという点で、両者の法律上の取扱いは対称ではありません。

点検事項

  • ① アプリに掲載している求人の業務内容、就業時間、休憩、持ち物、交通費の取扱いは、現場の実態と一致しているか
  • ② 労働条件通知書が労働者に交付されていること、およびその内容を、自社で確認しているか
  • ③ 直近3か月の自社都合による解約(キャンセル)の件数と理由を把握しているか。解約の理由は、労働条件通知書等に定める解約可能事由に該当するものであったか
  • ④ 自社都合で休業または早上がりをさせた場合に、休業手当または賃金を支払っているか。その判断を現場任せにしていないか
  • ⑤ 着替え、準備、後始末および待機の時間を労働時間として取り扱っているか。予定と異なる実際の労働時間の修正申請に、速やかに対応しているか
  • ⑥ 受入れ時に、業務に関する安全衛生上の説明を行っているか。その担当者と内容を定めているか
  • ⑦ 労働者が負傷した場合に、自社の労働災害として対応する手順(労災保険の請求への協力、労働者死傷病報告)を定めているか
  • ⑧ 利用料・手数料を含めた費用を把握し、原価に反映しているか。求人の掲載と解約の権限を持つ者を定めているか

よくあるご質問

Q. 来客の見込みが減ったため、前日にスポットワークの求人を解約しました。賃金を支払う必要はありますか。

A. 支払いが必要となる可能性が高いと考えられます。厚生労働省は、面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、労働者が応募した時点で労働契約が成立するものと一般的には考えられるとしています。労働契約の成立後に事業主の都合で休業させた場合は、平均賃金の100分の60以上の休業手当の支払いが必要であり(労働基準法26条)、事業主の故意、過失等による場合は、賃金の全額を支払う必要があります(民法536条2項)。来客の見込み違いは、通常、事業主の側の事情に当たります。

Q. 賃金の振込は仲介事業者が行っています。未払いが生じた場合、責任を負うのは仲介事業者ではないのですか。

A. 賃金の支払義務を負うのは、労働契約の当事者である使用者、すなわち求人企業です(労働基準法24条1項)。仲介事業者による振込は、支払いの事務を代行するものであり、これによって求人企業の賃金債務が消滅するわけではありません。仲介事業者が求人企業と並んで支払義務を負うか否かは、現在、東京地方裁判所で争われていますが、その結論にかかわらず、求人企業が責任を免れることはありません。

Q. スポットワークで受け入れた労働者が就労中に負傷しました。自社の労災保険を使うことになりますか。

A. そのとおりです。労災保険は労働者を使用する事業に適用され(労働者災害補償保険法3条1項)、スポットワークの労働者は、就労先の事業について成立する保険関係に基づいて給付を受けます。労働者が休業した場合には、労働基準監督署長への報告も必要です(労働安全衛生規則97条)。1日限りの就労であること、仲介事業者を通じて受け入れたことは、自社の労働災害であることを否定する理由になりません。

Q. 当日に就労しなかった労働者から、違約金を徴収することはできますか。

A. できません。労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をすることは禁止されています(労働基準法16条)。現実に生じた損害の賠償を請求することは禁止されていませんが、損害額等の立証は容易ではありません。募集人数に余裕を持たせる、欠員が生じた場合の手順を定めておくなど、運用によって備えることが現実的です。

まとめ

タイミーに対する集団訴訟で問われているのは、仲介事業者が雇用主であるか否かではなく、賃金の支払いを代行し、解約に関するルールを設計し、手数料を得ている事業者として、独自の責任を負うか否かです。利用規約の「雇用主としての責任を負わない」との定めは、職業紹介事業者の法的地位に沿うものですが、この争点に直接答えるものではありません。そして、訴訟の結論にかかわらず、スポットワークにおいて労働契約の当事者となり、休業手当および賃金の支払い、労働条件の明示、労働災害の防止と補償について責任を負うのは、求人企業です。スポットワークは、費用と責任を正確に理解したうえで利用すれば、有用な手段です。当事務所では、求人内容および労働条件通知書の確認、自社都合による解約が生じた場合の休業手当・賃金の取扱い、労働災害が発生した場合の初動、労働者またはその代理人から請求を受けた場合の対応、プラットフォーム型の事業における利用規約の設計を、顧問契約に基づき継続的に支援しています。

参考資料

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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。株式会社タイミーに対する訴訟は審理中であり、同訴訟および東京簡易裁判所の判決に関する記述は報道された内容に、同社の利用規約・料金に関する記述は本稿執筆時点で同社が公表している内容によります。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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