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シフト制労働者のシフト削減・「シフト外し」の法的リスク ― ティーエッセンス事件(東京地裁令和7年10月30日判決)・シルバーハート事件(東京地裁令和2年11月25日判決)にみるシフト決定権限の濫用と最低労働時間の合意、民法536条2項による賃金全額請求と労働基準法26条の休業手当の関係、MENYA事件(東京地裁令和6年3月26日判決)との分岐点、厚生労働省「シフト制」留意事項(令和8年6月改正)に基づく契約設計と段階的指導の実務

飲食、小売、介護、物流をはじめとする多くの業種において、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成されるシフト表によって初めて具体的な労働日・労働時間が確定する、いわゆる「シフト制」が広く用いられています。総務省統計局の労働力調査(詳細集計)によれば、2025年平均の非正規の職員・従業員は2,128万人に達しており、シフト制はパートタイム労働者・アルバイトを中心に、中小企業の主要な就労形態となっています。

シフト制については、「勤務日・勤務時間はシフトによる」と定めておけば、使用者がシフトを自由に設定・削減できるという理解が経営者の間に根強くあります。しかし、欠勤の多いパート従業員のシフトをゼロとした使用者に対し、就労できなかった期間の賃金の支払いを命じる裁判例が相次いでおり、この理解は法的に正確ではありません。本稿では、①シフト制をめぐる紛争の背景、②近時の裁判例の整理、③使用者が敗訴する法的構造、④契約・就業規則の整備、⑤欠勤の多い労働者への対応手順の順に整理し、点検事項を示します。

1 シフト制をめぐる労働紛争の背景

厚生労働省は、令和4年1月7日に「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(以下「留意事項」といいます。)を公表し、令和8年6月19日に年次有給休暇に関する記載を追加する改正を行っています。留意事項は、シフト制について、その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で契約当事者双方にメリットがあり得る一方、使用者の都合により労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、労働紛争が発生することがあると指摘しています。本稿で扱う「シフト外し」は、まさに前者の類型であり、シフト制で生計を立てる労働者にとって、シフトの削減は収入の減少に直結するため、紛争化しやすい領域です。

2 裁判例の整理

(1) ティーエッセンス事件(東京地裁令和7年10月30日判決)

おにぎり等を提供する飲食店を経営する会社に、時給1,200円のシフト制・期間の定めのない従業員として採用された労働者が、勤務開始から3か月弱の間に、体調不良を理由として6日間の欠勤と2日間の早退をした事案です。店長は面談の場を設けて体調の自己管理を求めましたが、労働者がこれ以上の対応はできない旨反発したことから、店長は「シフトに入れない」旨を告げ、その後、労働者がシフトの希望を提出したにもかかわらず一切のシフトを割り当てず、シフト共有用のLINEグループからも退会させました。労働契約書上、始業・終業時刻および休日は「シフト表により」とのみ定められていました。

東京地裁は、契約締結前に社会保険への加入が可能であることが確認されていたこと等から、週20時間以上の労働時間を最低限保障する旨の合意があったと認定したうえで、店長がシフトを一切割り当てなかった対応をシフト決定権限の濫用と評価し、労働者が就労できなかったことは使用者の責めに帰すべき事由によるものであるとして、民法536条2項に基づき、就労できなかった期間について週20時間分(月額にして9万6,000円以上)の賃金の支払いを命じたと報じられています。労働者が1時間も就労していない期間について、賃金全額の支払いが命じられた点に、本判決の実務上の重要性があります。

(2) シルバーハート事件(東京地裁令和2年11月25日判決)

高齢者介護・学童保育等の事業を営む会社において、週3日勤務を希望して採用され、労働契約書上は1日8時間・勤務日は「シフトによる」とされていた労働者が、2017年5月から7月にかけて月13日から15日(65時間から78時間)程度勤務していたところ、同年8月には5日、9月には1日、10月以降は0日にシフトを削減された事案です。東京地裁は、契約上週3日・1日8時間の労働時間の合意までは認められないとしつつ、シフト制で勤務する労働者にとってシフトの大幅な削減は収入の減少に直結し不利益が著しいことから、合理的な理由なくシフトを大幅に削減した場合にはシフトの決定権限の濫用に当たり違法となり得ると判示しました。そのうえで、8月の5日への削減には合理性を認める一方、9月の1日および10月の0日への削減については合理的な理由がなく決定権限の濫用に当たるとして、削減前3か月(5月から7月)の平均賃金額との差額の支払いを命じました。

(3) MENYA事件(東京地裁令和6年3月26日判決)

他方、使用者が勝訴した裁判例もあります。ラーメンチェーンを営む会社に、労働時間は「1日8時間、シフトは別途提出し個別に決定する」との条件で雇用されていた夫婦が、新型コロナウイルス感染症の影響による店舗の臨時休業・時短営業の後、2020年7月以降、会社から都内の複数店舗でのシフトを提示されたにもかかわらず、店舗の閉店告知、労働時間・日数の不足、店舗までの距離等を理由にこれを拒否し、就労できなかったのは会社の責めに帰すべき事由によるとして賃金全額を請求した事案です。東京地裁は、労働契約上、シフトは個別に決定するとされており、会社に一定の勤務を割り振る義務は生じないこと、提示されたシフトが労働者に過大な負担を課すものではなく、これを拒否した以上、就労不能は民法536条2項の債権者の責めに帰すべき事由にも労働基準法26条の使用者の責めに帰すべき事由にも当たらないとして、請求を棄却しました。

(4) 分岐点

ティーエッセンス事件・シルバーハート事件とMENYA事件を分けたのは、使用者が合理的なプロセスを経てシフトを設定していたかどうかです。前二者は、注意指導の過程を経ずに制裁的・報復的にシフトをゼロまたはこれに近い水準まで削減した事案であり、後者は、使用者が合理的な条件のシフトを提示し、労働者側がこれを拒否した事案です。使用者がシフトを提示した事実とその内容が記録として残っているかどうかが、紛争時の帰趨を左右します。

3 使用者が敗訴する法的構造

(1) シフト決定権限の濫用

シフト制労働契約において、具体的な労働日・労働時間を決定する権限は使用者にあります。しかし、労働契約法3条5項は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならないと定めており、裁判例は、シフト制で就労する労働者にとってシフトの大幅な削減は収入の減少に直結することを重視し、合理的な理由のない大幅な削減をシフト決定権限の濫用として違法と評価しています。実務上、違法判断において重要となるのは、①注意指導の手順を経ずに、制裁や嫌がらせと見られるような形で削減したこと、②月15日から0日のように、あまりにも大幅な変更であることの2点です。欠勤が多いという事実は、それ自体では削減の合理的理由とはならず、体調不良や発熱による欠勤は労働者の責めに帰し難い面があることから、指導の過程を経ずに直ちにシフトをゼロとする対応は、報復的なものと評価されやすい点に留意が必要です。

(2) 最低労働時間の合意の認定と社会保険の適用要件

労働契約書に「シフトによる」とのみ記載されている場合、裁判所は、契約締結時のやり取り、過去の就労実績、社会保険の加入状況等の間接事実から、最低限の労働日数・労働時間に関する合意の有無を認定します。ティーエッセンス事件では、契約締結前に社会保険への加入が可能であることが確認されていたことが、週20時間以上の合意を認定する根拠とされました。厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトによれば、短時間労働者が健康保険・厚生年金保険の加入対象となる要件の1つは「週の所定労働時間が20時間以上」であり、使用者が労働者を社会保険に加入させる前提で採用した事実は、週20時間以上の就労を前提とする合意の存在を推認させる事情となります。使用者が社会保険の加入手続を適法に行ったこと自体が、シフト削減の場面では使用者に不利な証拠となり得るという構造を理解しておく必要があります。

(3) 実質的解雇の評価

シフトを一切割り当てず、シフト共有用のLINEグループから退会させる対応は、労働者を従業員として扱わない意思の表れと評価され、実質的な解雇と同視されます。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利の濫用として無効となります(労働契約法16条)。解雇の要件を満たさない状況で、シフトをゼロとすることにより雇用終了と同様の結果を実現しようとする対応は、解雇規制の潜脱として、裁判所がその実質を捉えて違法と判断するリスクが極めて高いものです。

(4) 民法536条2項による賃金全額請求と労働基準法26条の休業手当

労働者が就労できなかった期間の賃金請求の根拠は、民法536条2項です。同項は、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができないと定めており、労働者に就労の意思と能力があり、シフトの希望も提出していたにもかかわらず、使用者が合理的な理由なく就労させなかった場合、賃金全額の請求が認められます。労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に平均賃金の100分の60以上の休業手当の支払いを義務付けていますが、これは最低保障を定めるものであり、使用者に帰責事由がある場合に民法536条2項に基づく賃金全額の請求を妨げるものではありません。「休業手当は6割」という理解のみでは、報復的なシフト削減の場合に賃金全額の支払いを命じられるリスクを見誤ることになります。

4 契約・就業規則の整備

(1) 労働条件の明示 ― 「シフトによる」では足りない

労働基準法15条1項は、労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示することを使用者に義務付け、始業・終業時刻や休日等については書面等による明示を求めています。留意事項は、シフト制労働契約においても、労働契約の締結時点で始業・終業時刻が確定している日についてはその時刻を明示しなければならず、労働条件通知書等に単に「シフトによる」と記載するのでは足りないとし、労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載したうえで一定期間分のシフト表を併せて交付する等の対応を求めています。休日についても、具体的な曜日等が確定していない場合は休日の設定に係る基本的な考え方を明示する必要があります。なお、短時間・有期雇用労働者については、昇給・退職手当・賞与の有無および相談窓口についても文書の交付等による明示が義務付けられており(パートタイム・有期雇用労働法6条1項)、令和8年10月1日施行の同法施行規則等の改正により明示事項が追加される点にも留意が必要です。

(2) 就業規則

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、始業・終業時刻、休日等について就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法89条1号)。留意事項は、シフト制労働者に関して就業規則上「個別の労働契約による」「シフトによる」との記載のみにとどめた場合、就業規則の作成義務を果たしたことにならないとし、基本となる始業・終業時刻や休日を定めたうえで「具体的にはシフトによる」旨を定めることは差し支えないとしています。

(3) シフト作成・変更のルールと目安・最低日数の合意

留意事項は、使用者が一方的にシフトを決めることは望ましくなく、使用者と労働者で話し合ってシフトの決定に関するルールを定めておくことが考えられるとして、①シフト表の作成に当たり事前に労働者の意見を聴取すること、②確定したシフト表を労働者に通知する期限や方法、③シフトの期間開始前後に確定した労働日・労働時間の変更を申し出る場合の期限や手続を、あらかじめ定めておくことを挙げています。一旦確定したシフトの変更は労働条件の変更に該当するため、使用者と労働者双方の合意により行う必要があります(労働契約法8条)。あわせて、留意事項は、労働日・労働時間の設定に関する基本的な考え方として、一定の期間において労働する可能性がある最大の日数・時間数・時間帯、目安となる労働日数・労働時間数(「1か月○日程度勤務」「1週間当たり平均○時間勤務」等)を合意しておくこと、これらに併せて最低限労働する日数・時間数(「1か月○日以上勤務」「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」等)を定めることも考えられるとしています。

使用者の立場からは、目安や最低日数を定めることは、その水準の就労を保障する義務を負うことと表裏の関係にあります。しかし、何も定めない場合には、前記3(2)のとおり、裁判所が過去の就労実績や社会保険の加入状況から使用者の想定しない内容の合意を認定するリスクがあります。繁閑に応じた調整の必要があるのであれば、「月間の勤務時間は○時間から○時間の範囲でシフトにより定める」といった幅のある定め方を、社会保険の適用要件との関係まで含めて設計し、労働者と合意のうえ、できる限り書面で確認しておくこと(労働契約法4条2項)が、紛争予防の観点から適切です。

5 欠勤の多い労働者への対応手順

(1) 事実確認と配慮

当日欠勤や早退が続く労働者に対しては、まず欠勤の事実と理由を確認します。体調不良が真実であれば、受診を勧める、本人と相談のうえ勤務日数を調整する等の配慮を尽くすことが先行します。この段階を経ずに直ちにシフトを削減する対応は、制裁的なものと評価される契機となります。

(2) 段階的指導と記録化

配慮を尽くしてもなお改善が見られない場合、または虚偽の欠勤が判明した場合には、口頭注意、書面による注意指導と段階を踏みます。各段階において、面談の日時、同席者、使用者が伝えた内容、本人の回答を当日中に記録化することが不可欠です。記録はA4用紙1枚程度の箇条書きで足り、問題のある労働者との面談は複数名で実施し、当日中に記録を作成するという運用を徹底することで、紛争時の立証構造が大きく変わります。ティーエッセンス事件において、店長の「シフトに入れない」との発言およびLINEグループからの退会措置は、報復的なシフト外しを裏付ける事情となったものと考えられ、感情的な発言や措置が使用者に不利な証拠となる点に留意が必要です。

(3) シフト削減を行う場合の要件

段階的な指導を経てもなお改善が見込めず、シフトの調整を行う場合には、削減の理由を明確にし、労働者に説明したうえで、記録に残す必要があります。月15日から0日といった急激かつ大幅な削減は、合理的理由の有無にかかわらず権限濫用と評価されるリスクが高く、避けるべきです。使用者が合理的な条件のシフトを提示し、労働者がこれを拒否した場合には、MENYA事件のとおり使用者の帰責事由は否定され得るため、提示の事実と内容を記録することが重要です。

(4) 雇用終了を検討する場合

雇用の終了を検討する場合、シフトをゼロとして事実上の退職に追い込む方法は、実質的解雇として違法となるリスクが極めて高く、選択肢となりません。第一に、退職勧奨により合意退職を目指す方法がありますが、労働者が明確に拒否した後も執拗に勧奨を続ける、長時間・多数回の面談を行う等の態様は違法な退職強要として損害賠償の対象となり得ます。第二に、有期労働契約であれば期間満了時の雇止めがありますが、契約が反復更新され無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合や、更新への期待に合理的な理由がある場合には、雇止めに客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要となります(労働契約法19条)。第三に解雇ですが、労働契約法16条の要件を満たす必要があり、段階的な指導とその記録が前提となります。正社員であるかパート・アルバイトであるかによって、相手の同意を得るという基本的な手順や重要度に差はありません。

点検事項

  • ① シフト制労働者の労働条件通知書に、原則的な始業・終業時刻、休日の設定に係る考え方、労働日数・労働時間の目安(または幅)を記載しているか。「シフトによる」とのみ記載した契約書を使用していないか
  • ② 就業規則において、基本となる始業・終業時刻や休日を定めたうえで「具体的にはシフトによる」旨を規定しているか。「シフトによる」との記載のみになっていないか
  • ③ シフト表の作成に当たる意見聴取、確定シフトの通知期限・方法、確定後の変更の申出期限・手続について、労働者と合意したルールを定め、書面で確認しているか
  • ④ 社会保険に加入させている短時間労働者について、加入要件(週の所定労働時間20時間以上)に対応する労働時間の合意内容を把握し、シフト設定がこれと整合しているか
  • ⑤ 欠勤・早退が続く労働者について、事実確認、配慮、口頭注意、書面指導の段階を踏み、面談の日時・同席者・内容・本人の回答を当日中に記録する運用が定着しているか。面談は複数名で実施しているか
  • ⑥ シフトを削減する場合、削減の理由を説明し記録しているか。急激かつ大幅な削減(ゼロを含む)や、LINEグループからの退会等の排除的措置を行っていないか
  • ⑦ 雇用終了を検討する際、退職勧奨の態様、雇止め(労働契約法19条)・解雇(同法16条)の要件を確認し、行動に移す前に弁護士に相談する体制があるか

よくあるご質問

Q. 労働条件通知書に「勤務日・勤務時間はシフトによる」と定めていれば、会社はシフトを自由に設定・削減できますか。

A. できません。シフトの決定権限は使用者にありますが、労働契約に基づく権利の行使は濫用してはならず(労働契約法3条5項)、裁判例は、シフト制で就労する労働者にとってシフトの大幅な削減は収入の減少に直結し不利益が著しいことから、合理的な理由なくシフトを大幅に削減した場合にはシフト決定権限の濫用として違法となり得ると判断しています(シルバーハート事件・東京地裁令和2年11月25日判決、ティーエッセンス事件・東京地裁令和7年10月30日判決)。また、厚生労働省の留意事項は、労働契約の締結時点で始業・終業時刻が確定している日についてはその時刻を明示する必要があり、労働条件通知書に単に「シフトによる」と記載するのでは足りないとし、就業規則についても「シフトによる」との記載のみでは作成義務を果たしたことにならないとしています。労働日・労働時間の目安や最低限の日数・時間数を契約で定めていない場合、裁判所は過去の就労実績や社会保険の加入状況等から最低労働時間の合意を認定することがあり、使用者が想定していない内容で合意が認定されるリスクがあります。

Q. シフトを入れなかった期間について、なぜ賃金の全額を支払わなければならないのですか。休業手当(6割)との関係はどうなりますか。

A. 民法536条2項は、債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務(労務の提供)を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付(賃金)の履行を拒むことができないと定めています。労働者に就労の意思と能力があり、シフトの希望も提出していたにもかかわらず、使用者が合理的な理由なくシフトをゼロとして就労させなかった場合、就労不能は使用者の責めに帰すべき事由によるものと評価され、賃金全額の請求が認められます。労働基準法26条の休業手当は「使用者の責に帰すべき事由による休業」について平均賃金の6割以上の支払いを義務付けるものですが、これは最低保障であり、使用者に帰責事由がある場合に民法536条2項に基づく賃金全額の請求を妨げるものではありません。他方、使用者が合理的なシフトを提示したにもかかわらず労働者側が就労を拒否したMENYA事件(東京地裁令和6年3月26日判決)では、使用者に特定の日数を割り振る義務はなく、就労不能は民法536条2項および労働基準法26条のいずれの帰責事由にも当たらないとして請求が棄却されており、使用者が合理的なプロセスを経てシフトを提示し記録しているかどうかが分岐点となります。

Q. 当日欠勤や早退を繰り返すシフト制の労働者について、シフトを減らすことは許されますか。

A. 欠勤の事実そのものが直ちにシフト削減の合理的理由となるわけではありません。体調不良や発熱による欠勤は労働者の責めに帰し難い面があり、ティーエッセンス事件では、欠勤に対する注意指導の過程をほぼ経ることなく、面談で反発を受けた直後に労働者の希望を無視してシフトをゼロとした対応が、制裁的・報復的なものと評価されました。実務上は、①欠勤の事実と理由の確認、②体調不良が真実であれば受診の勧奨や勤務日数の調整等の配慮、③改善がない場合や虚偽の欠勤が判明した場合の口頭注意、④書面による注意指導、という段階を踏み、面談の日時・同席者・伝達内容・本人の回答を当日中に記録化したうえで、それでもなお改善が見込めない場合に、合理的な範囲でのシフト調整や雇用終了の検討に進むことが求められます。削減を行う場合も、月15日から0日といった急激かつ大幅な削減は避け、削減の理由と段階を記録に残すことが必要です。

Q. シフト制のパート・アルバイトに辞めてもらいたい場合、どのような選択肢がありますか。

A. シフトをゼロとして事実上の退職に追い込む方法は、実質的な解雇と評価されて違法となるリスクが極めて高く、賃金全額の支払いを命じられる可能性があります。選択肢としては、第一に退職勧奨(話し合いによる合意退職)ですが、労働者が明確に拒否した後も執拗に勧奨を続ける、長時間・多数回の面談を行う、退職を強要するような言動を行うといった態様は違法な退職強要として損害賠償の対象となり得ます。第二に、有期労働契約であれば期間満了時の雇止めがありますが、契約が反復更新されて無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合や、更新への期待に合理的な理由がある場合には、雇止めに客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要となります(労働契約法19条)。第三に解雇ですが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法16条)。いずれの選択肢においても、段階的な指導とその記録が前提となるため、シフトを減らしたい、雇用を終了したいと考えた時点で、行動に移す前に弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ

シフト制において労働日・労働時間を決定する権限は使用者にありますが、その権限は濫用が許されないものであり、注意指導の過程を経ない制裁的・報復的な削減や、急激かつ大幅な削減は、シフト決定権限の濫用として違法と評価されます。シフトをゼロとし、連絡手段からも排除する対応は実質的な解雇と同視され、民法536条2項に基づき、労働者が就労していない期間の賃金全額の支払いを命じられるリスクがあります。労働基準法26条の休業手当(6割)は最低保障にすぎません。他方、使用者が合理的なシフトを提示し、その事実を記録していれば、労働者側の拒否による就労不能について使用者の帰責事由は否定され得ます。使用者に求められるのは、「シフトによる」とのみ定めた契約書・就業規則を見直し、厚生労働省の留意事項に沿ってシフト作成・通知・変更のルールと労働日数・時間数の目安を労働者と合意しておくこと、そして欠勤の多い労働者に対しては感情ではなく記録に基づく段階的な指導を行い、雇用終了を検討する場合には正面から話し合いの場を設けることです。当事務所では、シフト制労働契約・就業規則の設計とレビュー、問題のある労働者への指導手順の助言と面談への同席、退職勧奨・雇止め・解雇の適法性の検討、賃金請求を受けた場合の対応を、顧問契約に基づき継続的に支援しています。

参考資料

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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。裁判例の事実関係は判例情報および報道に基づきます。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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