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中小企業のホールディングス化(持株会社化)の法務 ― 株式移転による持株会社の設立手続(会社法772条・804条)、責任の遮断とその限界(会社法104条・法人格否認の法理)、受取配当等の益金不算入(法人税法23条)、不動産保有・事業承継・許認可事業・M&Aにおける活用と、租税回避の否認・管理コストの留意点

「ホールディングス」「持株会社」という語は上場企業の商号で目にすることが多く、中小企業には関係のない仕組みと受け止められがちです。しかし、持株会社は、株式移転(会社法2条32号)を用いれば株式の取得資金を要することなく設立することができ、資産と事業の分離、事業承継、許認可事業の管理、M&Aの受け皿といった、中小企業に固有の課題に対応する手段となり得ます。帝国データバンクの調査によれば、2025年末時点の社長の平均年齢は60.8歳で35年連続の過去最高、2025年の後継者不在率は50.1%であり、自社株式をどのように承継するかは、多くの中小企業に共通する経営課題となっています。

本稿では、①持株会社の意義と沿革、②持株会社化の法的効果とその限界、③持株会社化の手法、④税務上の取扱いの概要、⑤持株会社化が適する会社の類型、⑥管理コストとグループ運営上の留意点の順に整理し、検討にあたっての点検事項を示します。なお、税務上の取扱いは会社の資産構成や株主構成により結論が異なるため、具体的な検討にあたっては税理士との連携が不可欠です。

1 持株会社の意義と沿革

持株会社とは、他の会社の株式を保有することにより、その事業活動を支配・管理する会社をいいます。自らは事業を行わず、子会社の株式の保有と管理に専念するものを純粋持株会社、自らも事業を行うものを事業持株会社と呼ぶのが一般的です。商号に「ホールディングス」を用いる会社の多くは、前者の形態をとっています。

独占禁止法は、昭和22年の制定以来、事業支配力の過度の集中を防止する観点から、持株会社の設立および持株会社への転化を全面的に禁止していました。この全面禁止は平成9年(1997年)の改正(平成9年法律第87号)により改められ、現在は、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等に限って禁止されています(独占禁止法9条1項・2項)。同条は、子会社の株式の取得価額の合計額が総資産の額の50%を超える会社を「持株会社」と定義したうえで、グループの総資産が一定額(6,000億円を下回らない範囲内で政令で定める額)を超える場合に公正取引委員会への報告を義務付けるものであり(同条4項1号)、中小企業の持株会社化が同条に抵触する場面は通常想定されません。

2 持株会社化の法的効果とその限界

(1) 責任の遮断

株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とします(会社法104条)。持株会社が事業ごと・資産ごとに子会社を保有する場合、ある子会社の事業の失敗や偶発債務は、原則として当該子会社の財産の範囲にとどまり、持株会社や他の子会社の財産には及びません。一つの法人の中で複数の事業と資産を保有する場合に、一事業の失敗が会社財産の全体に及ぶことと対比すれば、法人格を分けることには、事業上のリスクを区分する機能があります。

(2) 責任の遮断の限界

もっとも、この効果には限界があります。第一に、子会社の借入れについて持株会社や経営者個人が連帯保証をしている場合、保証の範囲で責任は遮断されません。中小企業向けの融資ではグループ会社や経営者の保証が求められることが少なくないため、保証の有無と範囲の確認が必要です。第二に、法人格が全くの形骸にすぎない場合、または法律の適用を回避するために濫用される場合には、法人格が否認されることがあります(最高裁昭和44年2月27日第一小法廷判決)。子会社の財産・会計・意思決定が持株会社や経営者個人のものと混同されている場合には、法人格の独立性を主張することが困難となるおそれがあります。第三に、取締役会は、当該会社およびその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するための体制の整備について決定する権限を有しており(会社法362条4項6号。大会社である取締役会設置会社においては決定が義務付けられます。同条5項)、持株会社の取締役の職務には子会社の管理が含まれ得ます。法人格を分けることは、管理を不要とすることを意味しません。

(3) 事業別の業績の把握

一つの法人で複数の事業を営む場合、法人全体の損益は把握できても、事業ごとの損益、とりわけ共通して発生する人件費や間接費の配賦は曖昧になりがちです。事業ごとに法人を分ければ、各社の計算書類により事業別の業績が明確になり、経営資源の配分や事業の継続・撤退の判断の基礎となります。

(4) 株式の移転による事業の承継・売却

事業ごとに法人が分かれていれば、事業の売却は当該子会社の株式の譲渡により、グループ全体の承継は持株会社の株式の移転により行うことができます。個別の資産・契約・従業員を移転させる事業譲渡と比較して、取引先との契約関係や許認可に与える影響を小さくすることができる点に実務上の意義があります。

3 持株会社化の手法

(1) 株式移転

株式移転とは、一または二以上の株式会社が、その発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます(会社法2条32号)。既存の会社の株主は、保有する株式を新設の持株会社に移転し、その対価として持株会社の株式の交付を受けます。対価が金銭ではなく株式であるため、株式の取得資金を要しません。

手続としては、株式移転計画を作成し(同法772条1項)、持株会社の目的・商号・本店の所在地・発行可能株式総数、設立時取締役の氏名、株主に交付する持株会社の株式の数およびその割当てに関する事項等を定めます(同法773条1項)。株式移転計画は、株主総会の特別決議による承認を受けなければならず(同法804条1項・309条2項12号)、反対株主には株式買取請求権が認められます(同法806条)。持株会社は、その成立の日に既存の会社の発行済株式の全部を取得し、既存の会社の株主は同日に持株会社の株主となります(同法774条1項・2項)。設立の登記は、所定の日から2週間以内に行う必要があります(同法925条)。

株式移転では、既存の会社の法人格、財産、契約関係、従業員との雇用関係に変動が生じません。債権者の異議手続も、新株予約権付社債を持株会社が承継する場合を除き、要しません(同法810条1項3号)。株主が経営者本人または親族に限られる会社では、手続上の負担が比較的小さい手法といえます。

(2) 株式交換

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を、既存の他の株式会社または合同会社に取得させることをいいます(会社法2条31号・767条)。株式移転が持株会社を新たに設立するのに対し、株式交換は既存の会社を完全親会社とする点が異なります。経営者個人が複数の会社の株式を直接保有している場合に、そのうちの一社を親会社として他の会社を完全子会社とする場面等で用いられます。

(3) 会社分割

会社分割とは、会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、既存の他の会社(吸収分割)または新たに設立する会社(新設分割)に承継させることをいいます(会社法2条29号・30号)。既存の会社が営む事業を新設会社に承継させ、既存の会社自体を持株会社とする方法であり、新設分割により設立された会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い権利義務を承継します(同法764条1項)。一つの法人に複数の事業が混在している場合に事業ごとの子会社に切り分ける手段となりますが、債権者の異議手続(同法810条1項2号)、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律等に基づく労働者への通知・協議、許認可の承継(後記5(3))の検討を要し、株式移転と比較して手続上の負担は大きくなります。

(4) 後継者が設立した会社による株式の買取り

組織再編の手続によらず、後継者が設立した会社が、金融機関からの借入れにより先代経営者から株式を買い取る方法もあります。事業承継の場面で用いられる手法であり、後記5(2)で取り上げます。

4 税務上の取扱いの概要

(1) 株式移転時の課税

株式移転により、株主が持株会社(株式移転完全親法人)の株式のみの交付を受けた場合、旧株の譲渡はなかったものとみなされ、その時点では譲渡所得課税は生じません(所得税法57条の4第2項)。他方、完全子法人となる会社については、適格株式移転(法人税法2条12号の18)に該当しない場合、その保有する一定の資産について時価評価による評価損益の計上が必要となります(同法62条の9)。適格要件の充足については、実行前に税理士の確認を受ける必要があります。

(2) 受取配当等の益金不算入

持株会社の主たる収入は、子会社からの配当です。内国法人が受ける配当等のうち、完全子法人株式等(配当等の額の計算期間を通じて完全支配関係がある他の内国法人の株式等)に係るものは、その全額が益金の額に算入されません(法人税法23条1項・5項)。子会社の段階で法人税が課された利益に対し、持株会社の段階で重ねて課税することを避ける趣旨の制度です。この取扱いにより、子会社の利益を配当として持株会社に集約し、グループ内の投資や借入金の返済に充てる資金計画を立てやすくなります。なお、適用にあたっては確定申告書等への明細の添付が必要であり(同条7項)、配当は、会社法上の分配可能額の範囲内で、株主総会の決議等の手続を経て行う必要があります(会社法454条1項・461条1項8号)。

(3) 株式の評価

取引相場のない株式の相続税・贈与税における評価は、財産評価基本通達によります。持株会社は総資産に占める株式等の割合が高くなるため、その割合が50%以上である場合には「株式等保有特定会社」に該当し(財産評価基本通達189(2))、一般の評価会社とは異なる方法により評価されます(同189-3)。また、純資産価額の計算においては、評価差額に対する法人税額等に相当する金額が控除されますが(同185・186-2)、株式移転等により著しく低い価額で受け入れた株式については、受入時における評価差額がこの控除の計算から除かれます(同186-2)。持株会社化の後に生じた子会社株式の値上がり部分についてこの控除が働くことが、「株価が低い段階での持株会社化が有利になり得る」と説明される理由ですが、その効果は会社の資産構成・業績・適用される評価方式により大きく異なり、試算を経ずに一般化することはできません。

(4) 租税回避の否認

株式移転等の組織再編成に係る行為または計算で、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものについては、税務署長がこれを否認することができます(法人税法132条の2)。同族会社等の行為または計算で、株主等の相続税・贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものについても、同様の規定が置かれています(相続税法64条1項)。また、最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決は、相続税の負担の軽減を意図して行われた不動産の購入および借入れの事案において、財産評価基本通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によることは平等原則に違反しない旨を判示しています。税負担の軽減のみを目的とし、事業上の必要性の裏付けを欠く持株会社化は、否認の対象となるリスクを伴います。リスクの区分、承継、事業の再編といった持株会社化の目的を、検討の段階から記録しておくことが重要です。

5 持株会社化が適する会社の類型

(1) 不動産投資を予定している会社

事業会社が収益不動産を直接取得した場合、事業上のリスクと資産とが同一の法人に帰属します。事業が悪化して倒産に至れば、不動産も債権者に対する弁済の原資となります。逆に、不動産の取得に係る借入れや空室のリスクが事業会社の財務内容に反映され、本業に係る融資の審査に影響することもあります。持株会社または資産管理会社において不動産を保有すれば、事業上のリスクと資産とを法人格により区分することができ、賃料収入をグループの安定的な収益源とすることも可能です。

留意すべきは実行の時期です。事業会社の業績が悪化した後に不動産を別法人に移転する行為は、詐害行為取消請求(民法424条)や、破産手続における否認(破産法160条)の対象となり得ます。資産と事業の分離は、財務内容が健全な時期に行う必要があります。また、グループ内で不動産を賃貸する場合には、賃貸借契約書を作成し、賃料を相当な水準に設定することが求められます。

(2) 事業承継を控えている会社

後継者が先代経営者の株式を取得する方法は、相続、贈与、売買のいずれかです。業績が良好な会社ほど株式の評価額は高く、相続税は取得金額に応じて最高55%の税率により課されます。相続による場合には、株式が複数の相続人に分散し、議決権の帰属が不安定となるおそれもあります。

これに対応する手法の一つが、後継者が持株会社を設立し、当該持株会社が金融機関から資金を借り入れて、先代経営者から株式を買い取る方法です。後継者は、個人で買取資金を用意することなく、持株会社を通じて議決権を集中して確保することができます。先代経営者は株式の対価として金銭を取得するため、相続税の納税資金や、他の相続人に対する遺産分割の原資を確保することができ、株式の分散も回避できます。借入金の返済原資は、事業会社から持株会社への配当であり、前記4(2)の益金不算入の取扱いが資金計画の基礎となります。

この手法については、次の点に留意が必要です。第一に、先代経営者には株式の譲渡益について課税が生じます(所得税15%・住民税5%に復興特別所得税を加えた20.315%)。第二に、譲渡価額が時価と乖離している場合には、課税上の問題が生じ得るため、株価の算定を経る必要があります。第三に、返済原資は事業会社の利益に依存するため、業績が悪化した場合には返済が困難となります。借入れに際しては、返済期間、財務に関する誓約事項、保証の有無を確認する必要があります。第四に、先代経営者が取得した金銭は相続財産となるため、この手法は相続税の課税そのものを免れさせるものではなく、その意義は、議決権の集中、納税資金の確保、将来の株価上昇の切り離しにあります。

(3) 複数の許認可事業を営む会社

許認可は、申請者である法人について要件を審査したうえで与えられるものであり、事業譲渡や会社分割によって事業を移転しても、当然には承継されません。承継の可否と手続は個別の業法によります。例えば、建設業については、令和2年10月1日施行の改正により、事業の譲渡、合併および分割について事前に認可を受けることで、建設業者としての地位を承継することができる制度が設けられました(建設業法17条の2)。一般貨物自動車運送事業については、事業の譲渡・譲受けならびに事業を承継させる合併および分割は、国土交通大臣の認可を受けなければ効力を生じず、認可を受けた場合に許可に基づく権利義務が承継されます(貨物自動車運送事業法30条)。承継の規定を欠く許認可については、承継先において新たに許認可を取得する必要があります。

これに対し、許認可を有する会社の株式を譲渡する場合には、許認可を受けた法人自体に変更がないため、原則として許認可は維持されます(役員の変更等に伴う届出が必要となる場合があります)。許認可事業ごとに子会社を設け、持株会社がその株式を保有する体制としておけば、特定の事業を売却する際に、当該子会社の株式の譲渡により対応することができます。

また、建設業法8条、宅地建物取引業法5条等は、法人の役員等が一定の刑に処せられたこと等を欠格事由として定めています。一つの法人が複数の許認可を有している場合、役員に係る一つの事由が複数の許認可に同時に影響し得ます。事業ごとに法人を分けることは、この影響の範囲を限定する手段となりますが、同一人が複数の子会社の役員を兼任している場合には、その者に係る欠格事由は兼任先のすべてに及ぶため、役員構成を併せて検討する必要があります。

(4) M&Aによる事業拡大を予定している会社

買収した会社を吸収合併した場合、存続会社は消滅会社の権利義務を包括的に承継します(会社法750条1項)。買収後に簿外債務や係争が判明した場合、その負担は存続会社の財産に直接及びます。また、人事制度や企業文化の異なる組織を短期間で統合することは、現場の負担となります。持株会社の下に買収した会社を子会社として置く場合には、当該会社の法人格、商号、契約関係、許認可および雇用関係を維持したまま、グループとして緩やかに統合することが可能であり、偶発債務の影響も原則として当該子会社の財産の範囲にとどまります。

もっとも、持株会社の体制は、買収前の調査と契約上の手当てに代わるものではありません。法務デューデリジェンスによる問題点の把握と、株式譲渡契約における表明保証・補償条項の設計は、買収の形態にかかわらず必要です。

(5) 業績が伸びている会社

利益が継続的に計上されている会社の株式の評価額は、年を追って上昇します。経営者が高齢となってから対策に着手しても、評価額が高額となっており、選択し得る手法が限られる場合があります。前記4(3)のとおり、持株会社化の後に生じた子会社株式の値上がり部分については、評価上の取扱いが直接保有の場合と異なり得るため、評価額が比較的低い段階で持株会社化を検討することには合理性があります。加えて、子会社ごとに代表者を置くことにより、次世代の経営人材に経営の経験を積ませることができるという組織上の効果も期待できます。

6 管理コストとグループ運営上の留意点

持株会社化により法人の数が増えれば、法人ごとに決算、税務申告、役員変更等の登記が必要となり、管理に要する費用は確実に増加します。法人住民税の均等割は、所得の有無にかかわらず課されます(標準税率は、資本金等の額が1,000万円以下で従業者数50人以下の法人の場合、都道府県民税2万円・市町村民税5万円)。これらの継続的な費用を負担してもなお持株会社化の効果が上回るかどうかが判断の基準となり、継続的に年1,000万円程度以上の利益を計上していることが一つの目安になると考えています。この水準に達していない会社が、持株会社化を急ぐ必要はありません。

グループの運営にあたっては、持株会社と子会社との間の取引を契約により明確にしておく必要があります。持株会社が子会社から経営指導の対価や不動産の賃料を受ける場合には、契約書を作成し、役務の内容と対価の算定根拠を説明できる状態としておくことが、税務上も、法人格の独立性を確保するうえでも重要です。また、同一人が持株会社と子会社の取締役を兼任する場合、両社の間の取引は利益相反取引に該当し得るため、株主総会または取締役会の承認の要否を確認する必要があります(会社法356条1項・365条1項)。

点検事項

  • ① 持株会社化の目的(リスクの区分、事業承継、許認可事業の管理、M&Aの受け皿等)が明確であり、税負担の軽減以外の事業上の必要性を説明できるか
  • ② 株主構成を把握しているか。株式移転計画の承認に必要な特別決議の成立が見込めるか。名義株や所在不明の株主が存在しないか
  • ③ 税務上の適格要件、株式の評価への影響、配当による資金の移動について、税理士による試算を経ているか
  • ④ 子会社の借入れに係る持株会社・経営者個人の保証の有無と範囲を把握しているか
  • ⑤ 許認可事業を分割または移転する場合、業法上の承継手続(事前の認可・届出)と所要期間を監督官庁に確認しているか。役員の兼任による欠格事由の影響を検討しているか
  • ⑥ 持株会社と子会社との間の取引(経営指導、不動産賃貸、資金の貸借等)について、契約書を作成し、対価の算定根拠を説明できるか
  • ⑦ 法人の数の増加に伴う継続的な費用(決算・申告・登記・均等割)を見積もり、利益水準と比較しているか

よくあるご質問

Q. 中小企業でも持株会社を設立することはできますか。株式を取得する資金が必要ですか。

A. 設立することができます。株式移転(会社法2条32号)による場合、既存の会社の株主は、保有する株式を新設の持株会社に移転し、その対価として持株会社の株式の交付を受けるため、株式を取得するための資金は要しません。手続としては、株式移転計画の作成、株主総会の特別決議による承認、設立の登記等が必要です(同法772条・804条1項・309条2項12号・925条)。登記に係る費用や専門家の報酬は別途必要となり、税務上の適格要件の充足についても事前の確認を要します。

Q. 持株会社とすれば、子会社の負債について持株会社や経営者が責任を負うことはありませんか。

A. 株主の責任は株式の引受価額を限度とするため(会社法104条)、原則として、子会社の債務について持株会社が責任を負うことはありません。ただし、持株会社や経営者個人が子会社の借入れについて連帯保証をしている場合には、保証の範囲で責任を負います。また、子会社の法人格が全くの形骸にすぎない場合や、法律の適用を回避するために濫用されている場合には、法人格が否認されることがあります(最高裁昭和44年2月27日第一小法廷判決)。子会社の財産・会計・意思決定を持株会社や経営者個人のものと区別して管理することが前提となります。

Q. 許認可事業を子会社に移す場合、許認可は引き継がれますか。

A. 許認可は当然には承継されず、承継の可否と手続は個別の業法によります。建設業については、事前に認可を受けることで、事業の譲渡・合併・分割に伴い建設業者としての地位を承継することができます(建設業法17条の2)。一般貨物自動車運送事業については、事業を承継させる分割等は国土交通大臣の認可を受けなければ効力を生じません(貨物自動車運送事業法30条)。承継の規定がない許認可については、承継先で新たに取得する必要があり、取得までの間に事業を行えない期間が生じないよう、日程を設計する必要があります。これに対し、許認可を有する会社を株式移転により持株会社の子会社とする場合や、その株式を譲渡する場合には、許認可を受けた法人自体に変更がないため、原則として許認可は維持されます。

Q. 持株会社化による税負担の軽減が、税務上否認されることはありますか。

A. あり得ます。組織再編成に係る行為または計算で法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものは、税務署長が否認することができ(法人税法132条の2)、同族会社等の行為または計算で相続税・贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものについても同様です(相続税法64条1項)。相続税における財産の評価についても、通達による画一的な評価が実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合には、通達による評価額を上回る価額による課税が許容されています(最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決)。持株会社化は、事業上の目的に基づいて行い、その目的と検討の経過を記録しておくことが重要です。

まとめ

持株会社は、上場企業に限られた仕組みではなく、株式移転を用いれば、中小企業においても株式の取得資金を要することなく設立することができます。法人格を分けることにより、事業上のリスクの区分、事業別の業績の把握、株式の移転による事業の承継・売却が可能となり、完全子法人からの配当が益金に算入されないことは、グループ内の資金計画の基礎となります。不動産投資、事業承継、複数の許認可事業、M&A、業績の伸長といった事情を有する会社においては、検討する意義が大きいといえます。他方、責任の遮断には保証や法人格否認による限界があり、法人の数の増加に伴う管理コスト、許認可の承継手続、租税回避の否認のリスクについての検討を欠くことはできません。持株会社化は、会社法上の手続と税務上の検討とが交錯する領域であり、弁護士と税理士が連携して設計する必要があります。当事務所では、持株会社化のスキームの法的設計、株式移転・会社分割の手続、株式譲渡契約およびグループ内契約の整備、M&Aにおける法務デューデリジェンスを、顧問契約に基づき継続的に支援しています。

参考資料

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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。税務上の取扱いは会社の状況により異なります。統計は帝国データバンクの公表資料(2025年11月・2026年2月公表)によります。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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