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資金調達手段の選択と契約締結前に経営者が確認すべき事項 ― 融資・出資・資産の現金化・補助金等の4類型の法的性質と代償、経営者保証(経営者保証に関するガイドラインの3要件)と期限の利益喪失条項、出資後の議決権比率(会社法309条2項・341条)、買戻特約付きファクタリングの貸金業該当性(最高裁令和5年2月20日決定)、補助金の精算払いと補助金適正化法

資金調達の手段は、金融機関からの融資やベンチャーキャピタルからの出資に限られません。法的な性質に着目すれば、①融資(デット・ファイナンス)、②出資(エクイティ・ファイナンス)、③保有資産の現金化(アセット・ファイナンス)、④補助金・助成金・クラウドファンディングの4類型に整理することができ、それぞれ、調達した企業が負う義務と、手放すものが異なります。

資金需要が切迫した局面では、「現に利用できる手段」で調達することが優先され、契約条件の確認が後回しになりがちです。しかし、資金調達に関する契約は、締結した時点から会社と経営者個人を長期にわたり拘束します。本稿では、①4類型の法的性質、②手段の選択にあたっての視点、③融資契約における経営者保証と期限の利益喪失条項、④出資の受入れと議決権比率、⑤債権の売却(ファクタリング)と貸金業該当性、⑥補助金・クラウドファンディングの留意点の順に整理し、契約締結前に経営者自身が確認すべき事項を示します。

1 資金調達の4類型と法的性質

(1) 融資(デット・ファイナンス)

金銭消費貸借契約に基づき資金を借り入れる方法であり、借主は、業績のいかんにかかわらず、約定に従って元本を返還し利息を支払う義務を負います。民間金融機関からの融資のほか、株式会社日本政策金融公庫による融資、社債の発行がこれに含まれます。同公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める者または事業開始後おおむね7年以内の者を対象とし、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内とされています。また、信用保証協会は、中小企業者が金融機関から資金の貸付けを受けること等により負担する債務の保証を業務としており(信用保証協会法20条1項1号)、信用力が十分でない創業期の企業が民間金融機関から融資を受けるための制度として広く利用されています。

(2) 出資(エクイティ・ファイナンス)

株式を発行し、その対価として資金の払込みを受ける方法です。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資、第三者割当てによる募集株式の発行がこれに当たります。払い込まれた資金は会社の資本となり、原則として返還義務を負いません。その代わり、出資者は株主として、株主総会における議決権その他の権利を取得します。

(3) 保有資産の現金化(アセット・ファイナンス)

会社が保有する資産を売却して資金を得る方法です。売掛債権を第三者に譲渡して支払期日前に資金化するファクタリングや、不動産その他の資産の売却がこれに当たります。新たな債務を負担せず、株式も発行しない点に特徴があります。

(4) 補助金・助成金・クラウドファンディング

国・地方公共団体から交付される補助金・助成金や、インターネットを通じて不特定多数の者から資金を集めるクラウドファンディングです。返還を要しない資金を得られる点に特徴があり、国の補助金は、中小企業庁が運営する「ミラサポplus」で検索することができます。

2 手段の選択にあたっての視点 ― 各類型の利点と代償

融資の最大の利点は、経営権に影響しないことです。金融機関は貸付けによって株主となるわけではなく、会社の意思決定は従前の株主のもとにとどまります。その代償は、約定どおりの返済義務です。事業が計画どおりに進まなかったとしても、返済期日が当然に延びることはありません。なお、借入れは経営が悪化した企業が行うものと捉えられがちですが、金融機関は業績の良好な企業に対して貸付けを行うものであり、業績が良好な時期に融資枠を確保し、取引実績を積み重ねておくことが、金融実務における定石です。

出資の利点は返還義務がないことですが、その代償は持分の希釈化であり、発行した株式は当然には戻りません。出資を受ける額が、手放す議決権比率に見合うものであるかは、厳格に検討する必要があります(後記4)。資産の現金化は、融資と比べて手続が簡易で資金化までの期間が短い反面、手数料や売却損による目減りが生じ、対象となる資産が尽きれば反復することができません。補助金は、返還を要しない反面、原則として後払いであり、審査を経て採択されなければ交付されません(後記6)。

以上のとおり、いずれの類型にも利点に対応する代償があります。とりわけ、「返還を要しない資金」であることと「直ちに利用できる資金」であることとは別の問題であり、この点を混同して資金計画を立てると、入金前に資金が不足する事態を招きます。自社の成長段階と資金使途に照らし、各類型を組み合わせて設計することが求められます。

3 融資契約 ― 経営者保証と期限の利益喪失条項

(1) 経営者保証の位置付けの変化

中小企業向けの融資では、経営者が会社の債務を連帯保証する「経営者保証」が長く慣行とされてきました。経営者保証が付された状態で会社が倒産すれば、経営者個人も保証債務の履行を求められ、個人の破産に至ることが少なくありません。

もっとも、この慣行は見直しが進んでいます。「経営者保証に関するガイドライン」(2013年12月公表・2014年2月1日適用開始)は、①資産の所有や資金のやりとりに関して法人と経営者が明確に区分・分離されていること、②財務基盤が強化されており法人のみの資産や収益力で返済が可能であること、③金融機関に対し適時適切に財務情報が開示されていること、の3要件を示しており、その全部または一部を満たす事業者は、経営者保証なしで融資を受けられる可能性、または既に提供している経営者保証を見直すことができる可能性があるとされています。2022年12月23日には金融庁・経済産業省・財務省が「経営者保証改革プログラム」を策定し、これを受けた監督指針の改正により、民間金融機関は、経営者保証を求める場合には、どの要件が充足されていないために保証が必要となるのか、どのような改善を図れば保証の解除の可能性が高まるのかを、事業者・保証人に対して個別具体的に説明し、その内容を記録することが求められています。金融庁の公表資料によれば、民間金融機関の新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合は、2025年度実績で55.7%です。

(2) 契約締結前・締結後の対応

したがって、融資契約の締結にあたっては、経営者保証の提供を所与とせず、保証の要否と範囲について金融機関に説明を求めるべきです。既に保証を提供している場合も、借換え・期限の更新・追加融資の各局面は、保証の解除または変更を申し入れる機会となります。申入れそのものに費用はかからず、上記3要件の充足状況を決算書・月次試算表・資金繰り表等によって示すことが、交渉の基礎となります。

(3) 期限の利益喪失条項

あわせて確認すべきは、期限の利益喪失条項です。民法は、債務者が破産手続開始の決定を受けたとき等に期限の利益を主張することができなくなる旨を定めていますが(民法137条)、融資契約では通常、これに加えて、返済の遅滞、財務内容に関する虚偽の報告、他の債務についての期限の利益の喪失等を喪失事由として定めています。同条項が適用されると、分割して弁済する利益が失われ、残債務の全額について直ちに弁済を求められ、保証人も履行の請求を受けます。いかなる場合に一括請求を受けるのかは契約ごとに異なるため、締結前に喪失事由を確認しておく必要があります。

4 出資の受入れ ― 議決権比率の意味

出資を受ける際に最も重要な検討事項は、出資後の議決権比率です。定款の変更、合併その他会社の基礎に関わる事項の決定には、株主総会の特別決議、すなわち、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数による決議を要します(会社法309条2項)。したがって、特定の株主が議決権の3分の1を超えて保有する場合、当該株主は特別決議の成立を単独で阻止することができます。

さらに、役員を選任し、または解任する株主総会の決議は、出席した株主の議決権の過半数をもって行われ(同法341条)、役員はいつでも株主総会の決議によって解任することができます(同法339条1項。正当な理由のない解任については、解任された者に損害賠償請求権が認められるにとどまります。同条2項)。議決権の過半数を保有する株主は、取締役の選任・解任を通じて、経営陣の構成を決定することができます。創業時にまとまった資金の提供を受ける見返りとして過半数の株式を出資者に交付した創業者が、事業が軌道に乗った後に出資者との関係が悪化し、取締役を解任されて経営から排除された事例も、現実に存在します。

創業初期は、株式の比率が持つ法的な意味が十分に理解されないまま、少額の資金と引換えに相当な割合の株式が交付されることがあります。交付する株式の割合が、受け入れる資金の額に見合うものであるか、出資後の議決権比率が3分の1・過半数という各水準との関係でどこに位置するかを、出資を受ける前に確認すべきです。あわせて、投資契約・株主間契約に定められる事前承諾事項、株式の買取りに関する条項等についても、締結前の検討が欠かせません。

5 債権の売却 ― 買戻特約付きファクタリングと貸金業該当性

(1) 金融庁の注意喚起

ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスであり、真正な債権の売買である限り、適法な資金調達手段です。しかし、金融庁は、ファクタリングを装って高金利の貸付けを行う業者の存在について注意を喚起しています。金融庁によれば、ファクタリングとして勧誘を受けた場合であっても、売主が債権を買い戻すこととされている場合や、売主が譲渡した債権の回収を委託され、回収することができなかったときに売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている場合には、貸金業に該当するおそれがあります。また、買取代金が債権額に比べて著しく低額である場合には、偽装ファクタリングの疑いがあるとされています。

(2) 契約の名称ではなく実質による判断

契約書の表題が「債権譲渡契約」であることは、取引の性質を決定しません。最高裁判所は、労働者の賃金債権を譲り受けて金銭を交付する取引(いわゆる給与ファクタリング)に関する刑事事件において、債権譲渡の対価としてされた金銭の交付が、貸金業法2条1項および出資法5条3項にいう「貸付け」に当たると判断しています(最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定・刑集77巻2号13頁)。同決定は事業者向けのファクタリングについて直接判断したものではありませんが、取引の形式が債権譲渡であっても、資金の回収の仕組み等の実質に照らして貸付けと評価され得ることを示したものといえます。

貸付けに当たる場合、貸金業の登録を受けずにこれを業として行うことは違法であり(貸金業法3条1項・11条1項)、業として行う貸付けについて年20%を超える割合による利息の契約をすることは刑事罰の対象となります(出資法5条2項)。貸金業を営む者が年109.5%を超える割合による利息の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は無効とされます(貸金業法42条1項)。買取代金と債権額との差額を利息とみて年率に換算すると、これらの水準を大きく超える取引も少なくありません。

(3) 事前の確認が唯一の実効的な対策である理由

この種の取引の勧誘は、資金繰りが逼迫した企業に向けられます。現金は不足しているが売掛債権はあるという局面では、短期間で資金化できるとの提案は魅力的に映り、契約書の内容を十分に確認しないまま締結に至りがちです。買戻しの約定は、「買戻し」という文言で明示されているとは限らず、債権の回収の委託、債務不履行時の売主の支払義務、保証といった形で定められていることもあります。違法な業者との取引は、事後に契約の効力を争うことができたとしても、取立てへの対応や被害の回復に多大な負担を要し、司法手続による救済には限界があります。契約を締結する前に、買戻しや償還に関する約定の有無、支払の原資、買取代金と債権額との差を確認し、疑いがあれば契約しないことが、最も実効的な対策です。

6 補助金・クラウドファンディングの留意点

(1) 補助金 ― 精算払いと不正受給

補助金は、原則として後払い(精算払い)であり、事業者が先に経費を支出して事業を実施し、事業の実施後に必要書類を提出して検査を受けた後に、はじめて受け取ることができます。また、審査を経て採択されなければ交付されず、申請すれば必ず受け取ることができるものではありません。補助金の交付を前提として資金計画を立てる場合には、交付までの間の資金を別途手当てしておくこと、不採択となった場合の対応を想定しておくことが必要です。

国の補助金については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律が適用されます。補助事業者が補助金を他の用途に使用するなどした場合、交付決定は取り消され(同法17条1項)、既に交付された補助金の返還を命じられるほか(同法18条1項)、受領の日から納付の日までの日数に応じて年10.95%の割合で計算した加算金を納付しなければなりません(同法19条1項)。偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられ、またはこれを併科されます(同法29条1項)。申請内容と事業の実態を一致させることは、当然の前提です。

(2) クラウドファンディング

クラウドファンディングは、支援者に商品・サービスを提供する購入型、対価を伴わない寄付型、出資として行われる投資型に大別されます。購入型は、資金の調達と同時に市場の反応を確認することができる利点がある一方、目標額に達しない場合や、約束した商品・サービスを提供することができない場合には、信用の毀損を招きます。投資型は金融商品取引法の規制の対象であり、株式投資型の募集の取扱いは、同法に基づく登録を受けた金融商品取引業者を通じて行われます(同法29条・29条の4の2参照)。投資型の利用を検討する場合には、事前に専門家の助言を得るべきです。

点検事項

  • ① 資金使途と返済原資に照らし、融資・出資・資産の現金化・補助金等のいずれが適切かを比較検討したか。「返還を要しない資金」と「直ちに利用できる資金」を区別して資金計画を立てているか
  • ② 業績が良好な時期に、金融機関との取引実績を積み、融資枠を確保しているか。月次試算表・資金繰り表を整備し、金融機関に説明することができるか
  • ③ 融資契約の締結前に、経営者保証の要否・範囲について金融機関に説明を求めたか。既存の保証について、借換え・更新の機会に解除・変更を申し入れたか
  • ④ 融資契約における期限の利益喪失事由を把握しているか
  • ⑤ 出資を受けた後の議決権比率を試算し、3分の1超・過半数の各水準との関係を確認したか。交付する株式の割合は、受け入れる資金の額に見合っているか
  • ⑥ ファクタリング契約に、買戻し、償還、回収不能時の売主の支払義務に関する約定が含まれていないか。買取代金は債権額に比べて著しく低額でないか
  • ⑦ 補助金の交付までの間の資金を手当てしているか。不採択の場合の計画があるか。申請内容と事業の実態は一致しているか

よくあるご質問

Q. 金融機関から経営者保証を求められた場合、応じなければ融資を受けられないのでしょうか。

A. 経営者保証の提供は、融資の当然の前提ではありません。「経営者保証に関するガイドライン」は、法人と経営者の明確な区分・分離、法人のみの資産や収益力で返済が可能な財務基盤、適時適切な財務情報の開示という3要件を示しており、その全部または一部を満たす事業者は、経営者保証なしで融資を受けられる可能性があるとされています。金融機関は、保証を求める場合には、どの要件が充足されていないのか、どのような改善を図れば解除の可能性が高まるのかを個別具体的に説明することが求められています。まずは金融機関に説明を求め、既存の保証については借換え・更新の機会に見直しを申し入れることが考えられます。

Q. 出資者に交付する株式は、どの程度までにとどめるべきでしょうか。

A. 一律の基準はありませんが、議決権の3分の1と過半数が重要な水準となります。特定の株主が議決権の3分の1を超えて保有すると、定款変更や合併等に必要な株主総会の特別決議(会社法309条2項)を単独で阻止することができます。過半数を保有する株主は、取締役の選任・解任(同法341条・339条1項)を決定することができ、創業者自身が解任されることもあり得ます。受け入れる資金の額と交付する株式の割合が見合っているかを検討し、投資契約・株主間契約の内容とあわせて、締結前に専門家の確認を受けることを推奨します。

Q. ファクタリング契約に買戻しの約定がある場合、どのような問題がありますか。

A. 金融庁は、ファクタリングとして勧誘を受けた場合であっても、売主が債権を買い戻すこととされている場合や、売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている場合には、貸金業に該当するおそれがあるとして注意を喚起しています。最高裁判所も、給与ファクタリングに関する事案において、債権譲渡の対価としてされた金銭の交付が「貸付け」に当たると判断しています(最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定)。貸付けに当たる場合、無登録での営業や上限を超える利息の契約は違法です。このような約定を含む契約は締結を避け、締結前に専門家に確認を求めるべきです。

Q. 補助金の交付を前提に、設備投資の資金計画を立ててもよいでしょうか。

A. 補助金は原則として後払い(精算払い)であり、事業の実施後、検査を経てはじめて受け取ることができます。審査を経て採択されなければ交付されないため、交付を当然の前提とすることもできません。補助金を見込む場合には、交付までの期間の資金を融資等により別途手当てし、不採択となった場合にも事業を継続することができる計画としておく必要があります。なお、実態と異なる申請により交付を受けた場合には、交付決定の取消し、返還および加算金の納付を命じられ、刑事罰の対象ともなります(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律17条から19条まで・29条)。

まとめ

資金調達の手段は、融資、出資、資産の現金化、補助金等の4類型に整理することができ、いずれにも利点に対応する代償があります。融資は経営権を維持することができる反面、返済義務を伴い、出資は返還を要しない反面、議決権の希釈化を伴います。資産の現金化は迅速である反面、目減りを伴い反復することができず、補助金は返還を要しない反面、後払いであって交付も確実ではありません。そのうえで、経営者自身が契約締結前に確認すべき事項は、融資における経営者保証の要否・範囲、出資における議決権比率、ファクタリングにおける買戻しの約定の三点です。資金需要が切迫してからでは、選択肢は限られ、条件も不利になります。当事務所では、融資契約・投資契約・ファクタリング契約の締結前の確認、経営者保証の見直しに向けた準備、資本政策の検討を、顧問契約に基づき継続的に支援しています。

参考資料

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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。融資制度の内容は日本政策金融公庫の公表情報、経営者保証に依存しない融資の割合は金融庁の公表資料(2025年度実績)によります。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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