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2026〜2027年施行の法改正と業界別リスク ― カスハラ対策義務化・物流効率化法・改正建設業法・育成就労制度への対応

2026年から2027年にかけて、労働・物流・建設・外国人雇用と、現場を持つ企業を直撃する法改正の施行が集中しています。いずれも共通するのは、これまで適法であった「従来どおりの経営」が、施行日を境にそのまま法令違反となり得ることです。違反に対しては、行政指導・勧告、罰金、企業名の公表といった直接の制裁に加え、従業員からの損害賠償請求や人材流出という形でも影響が及びます。本コラムでは、影響の大きい四つの改正 ― 育成就労制度と不法就労助長罪の厳罰化、改正建設業法の標準労務費、改正物流効率化法、カスタマーハラスメント対策の義務化 ― について、対象となる業界・企業と講ずべき対応を整理します。

外国人材を雇用する企業 ― 育成就労制度と不法就労助長罪の厳罰化(2027年4月)

2024年に成立した改正法により技能実習制度は廃止され、2027年4月1日から「育成就労制度」が施行されます。新制度は、原則3年間で特定技能1号の水準まで人材を育成することを目的とし、一定条件下での転籍(職場の移動)も認められます。介護・外食・宿泊・製造業など外国人材に依存する業界では、「安価な労働力を転籍させずに使う」という発想の企業から人材が流出していく構造転換が予定されています。

経営者に直接影響するのが、不法就労助長罪の厳罰化です。法定刑は「3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」へ引き上げられ、拘禁刑と罰金が併科される場合もあります。重要なのは、この罪は「知らなかった」というだけでは免責されない点です。在留カードの確認を怠るなど、知らなかったことに過失があれば処罰の対象となり、法人にも罰金が科されます。処罰を免れるのは、必要な確認を尽くし過失がまったくない場合に限られます。雇入れ前の在留カード確認と記録化は、文字どおり経営者自身を守る手続です。

建設業 ― 標準労務費と原価割れ契約の禁止(2025年12月全面施行)

2024年公布の改正建設業法(第三次・担い手3法)により、中央建設業審議会が「労務費に関する基準」(標準労務費)を作成・勧告し、これを著しく下回る労務費による見積りや、原価を下回る請負契約が禁止されました。この規制は発注者側だけでなく、安値で受注する受注者側も対象とする点に特徴があります。改正は2024年12月と2025年12月の二段階で施行され、現在は全面適用の段階にあり、職種ごとの具体的な基準額も国土交通省から順次公表されています。違反には国土交通大臣・都道府県知事による指導・処分のリスクがあります。

あわせて、建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。上限は原則として月45時間・年360時間であり、特別条項付き三六協定を締結しても年720時間が限度です。「安く・長く働かせて回す」という従来型の工事運営は、労務費・労働時間の両面から法的に成立しなくなりました。

物流・運送業と「荷主企業」 ― 改正物流効率化法(2026年4月)

改正物流効率化法のポイントは、運送事業者だけでなく荷主側の企業も規制対象としたことです。2025年4月からすべての荷主・物流事業者に物流効率化の努力義務が課され、2026年4月からは、前年度の取扱貨物量9万トン以上の特定荷主等・約3,200社に対し、中長期計画の提出と、役員クラスの物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられました。初回の中長期計画の提出期限は2026年10月末です。計画の提出や報告を怠った場合は50万円以下、国の命令に違反した場合等は100万円以下の罰金が定められています。

トラックドライバーの時間外労働規制(いわゆる2024年問題)で輸送力が細るなか、「荷主の責任」において物流を効率化させるというのが本法の建付けです。メーカー・小売・卸など「荷物を出す側」の企業は、まず自社が特定荷主に該当するか、貨物量の把握から着手する必要があります。

顧客と接するすべての企業 ― カスハラ対策の義務化(2026年10月)

改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策がすべての企業に義務化されます。パワハラ対策義務化の際に設けられたような中小企業への猶予期間はありません。事業主には、対応方針の明確化と周知、相談体制の整備、被害を受けた従業員への配慮等の雇用管理上の措置が求められ、具体的な内容は2026年2月に告示された厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)に示されています。東京都では2025年4月から全国初のカスタマー・ハラスメント防止条例が先行施行されています。

この義務の違反に罰金はありません。しかし、行政による指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には企業名が公表されます。さらに実務上重要なのは民事リスクです。「お客様は神様」として従業員に我慢を強いてきた企業は、「会社は守ってくれなかった」として、従業員から安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求されるリスクを抱えることになります。飲食・小売・宿泊など顧客と直接接する業界はもちろん、電話・窓口対応のあるすべての企業が対象です。

四つの改正に共通するのは、いずれも「就業規則・契約書・社内体制」の整備を企業に求めていることです。①自社に適用される改正と施行日を一覧化し、施行日カレンダーを作成する。②施行日から逆算して、規程・契約・教育をアップデートする。③法対応で増加するコスト(労務費・物流費等)は、早期に価格転嫁・取引条件の交渉に織り込む。④業界団体・顧問弁護士など、法改正情報が自動的に入る経路を確保し、四半期ごとに点検する。

よくあるご質問

Q. カスタマーハラスメント対策の義務化は、いつから、どの企業に適用されますか。

A. 2026年10月1日から、企業規模を問わずすべての企業に適用されます。中小企業への猶予期間はありません。罰金はありませんが、勧告に従わない場合の企業名公表と、従業員に対する安全配慮義務違反の損害賠償リスクがあります。

Q. 改正物流効率化法の「特定荷主」とは何ですか。運送会社でなくても対象になりますか。

A. 前年度の取扱貨物量9万トン以上の荷主等が指定対象で、メーカー・小売など「荷物を出す側」も対象です。該当すれば中長期計画の提出(初回は2026年10月末期限)と役員クラスのCLO選任が義務となり、懈怠には罰金の定めがあります。

Q. 外国人従業員の在留資格に問題があった場合、「知らなかった」で済みますか。

A. 済みません。在留カードの確認を怠るなど過失があれば処罰の対象となり、法人にも罰金が科されます。2027年4月からは法定刑が5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金(併科あり)に引き上げられます。

まとめ

法改正への対応はコストと受け止められがちですが、実際には、行政処分・訴訟・人材流出から会社を守る投資であり、対応した企業から順に信用と競争力へ転化していくルール変更です。そして法の世界では、「知らなかった」という弁明は原則として通用しません。当事務所では、自社に適用される法改正の洗い出しと施行日管理、就業規則・委託契約書・労務管理体制の改正対応、カスハラ対応方針・マニュアルの整備、外国人雇用のコンプライアンス体制構築まで、法改正対応の全般を支援しています。自社への影響の確認だけでも、お気軽にご相談ください。

参考資料

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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。施行日・数値等は2026年8月時点の情報に基づきます。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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