消費者庁は、2026年9月10日、「デジタル取引・特定商取引法等検討会」の中間取りまとめを公表し、いわゆるダークパターンを包括的に規律するための特定商取引法の改正に向けた方向性を示しました。報道によれば、消費者庁は2027年の通常国会への改正法案の提出を目指しています。ECサイトの運営、定期購入(サブスクリプション)の提供、Web広告の出稿を行う事業者にとって、画面設計・導線設計そのものが法規制の対象となる時代が近づいています。
もっとも、留意すべきは、改正を待つまでもなく、現行の特定商取引法および景品表示法の下で、ダークパターンに該当する表示はすでに行政処分・刑事罰・取消権の対象となっており、2025年度には最終確認画面の誤認表示等を理由とする6か月の業務停止命令が複数件出ているという事実です。本稿では、①ダークパターンの定義と規制の焦点、②検討会中間取りまとめの内容、③現行法の下での規律、④行政処分事例、⑤消費者庁の実態調査にみる典型例、⑥事業者の対応の順に整理し、事業者の点検事項を示します。
1 ダークパターンとは何か
(1) 定義
ダークパターンについて、法令上の定義はありません。中間取りまとめは、OECD(経済協力開発機構)が2022年10月の文書「Dark commercial patterns」において、「消費者を誘導し、欺き、強要し又は操って、多くの場合消費者の最善の利益とはならない選択を消費者に行わせるもの」をダーク(コマーシャル)パターンと整理していることを引用しています。また、中間取りまとめは、インターネット取引においてオンライン上の表示・UIの設計・運用が高度化し、心理の誘導に関する知見等を活用した表示・導線設計により、消費者が自らの意思決定過程を十分に認識しないまま契約締結に誘導され得る手法が見られるようになっていると現状を分析しています。
(2) 規制の焦点 ― 「売り方の工夫」との区別
事業者にとって重要なのは、通常のマーケティング上の工夫とダークパターンとの線引きです。中間取りまとめは、商品を分かりやすく表示すること、購入手続を円滑にすること、一定の案内表示を行うこと自体は消費者の利便性向上にも資するものであるとしたうえで、規律の検討に当たっては、消費者の誤認を招く手法や、威迫、迷惑又は不安を覚えさせる等の攻撃的手法により望まない申込み等を迫る手法に焦点を当てるべきであるとしています。他方で、問題となる手法は多様であり、個別の手法を列挙し尽くすことは困難であることから、変化に柔軟に対応できる一定程度包括的な規律を検討するとともに、事業者の予見可能性を確保するため、下位法令やガイドラインにおいて違法なパターン(ブラックリスト)や適法なパターンを示す方法で明確化すべきであるとしています。
(3) 被害の規模
規制強化の背景には被害の規模があります。一般社団法人ダークパターン対策協会が2026年8月に公表した調査によれば、一般消費者の約3割が過去1年間にダークパターンによる金銭的な被害(意図しない購入・課金・契約)を経験し、被害額は年間約2.4兆円から約3.2兆円と推計されています。2024年の同調査の推計(約1兆575億円から約1兆6,760億円)からほぼ倍増しています。
2 検討会中間取りまとめの内容
(1) 経緯と今後のスケジュール
検討会は2026年1月22日に第1回が開催され、同年8月24日の第8回会合で中間取りまとめ(案)が示されました。9月2日の第9回会合を経て、9月10日に中間取りまとめが公表され、9月16日から10月31日までの期間で意見募集(パブリックコメント)が実施されています。報道によれば、消費者庁は意見募集の結果を踏まえて法改正の準備を進め、2027年の通常国会への特定商取引法改正案の提出を目指すとされています。改正法が成立した場合でも、施行までには一定の期間が置かれるのが通例であり、新たな規律の効力が生じるのは早くても2027年以降となる見込みです。
(2) 広告場面 ― 3つの類型
中間取りまとめは、広告場面において、消費者の誤認を招く又は威迫、迷惑若しくは不安を覚えさせるなどして、消費者の意に反して申込みをさせようとする表示・UIに対する規律を設けるべきであるとし、規律対象の例として次の3つを挙げています。
- ① 契約の核心的な要素である支払金額(違約金等を含む)、分量、契約期間等について、一般的な消費者が通常の注意をもって見た場合に、その内容を正確かつ容易に認識できない虚偽・不明瞭な表示・UI(誤認を招く手法)
- ② 口コミ、利用状況、在庫情報、タイムセール等の商品の性能や内容に関連する情報について、その内容が虚偽である表示・UI(誤認を招く手法)
- ③ 契約の申込みに関し、操作の反復又は威迫的な文言等を用いて、消費者を威迫し、迷惑を覚えさせ又は不安を生じさせるような仕方によって、消費者に契約の申込み・締結をさせようとする表示・UI(攻撃的な手法)
ここでいう「一般的な消費者」には高齢者・未成年者等も含まれ、通常の注意を払う消費者であっても、取引環境や表示の態様によっては意思決定が歪められ得ることを踏まえるものとされています。判定の基準は、担当者の意図ではなく、一般的な消費者の認識です。③の「操作の反復」については、事業者が別の選択肢を提示して確認や後押しを行うこと自体は通常の営業活動としてあり得るため、単なる反復や選択肢の提示自体を問題とするのではなく、規制対象となる「操作の反復」の内容や程度を明確化すべきとの指摘や、取引内容の確認に必要な繰り返しや振り込め詐欺防止等を目的とする表示まで規制対象とすべきではないとの指摘が付記されています。加えて、実際は広告であるにもかかわらず広告であることが判別し難い表示を禁止し、一見して広告であることが明らかでない表示には広告である旨の明示を求めるべきであるとされています。これらに違反した場合の対応は、行政規律による是正を基本とすべきであるとされています。
(3) 契約場面 ― 最終確認画面と契約内容の交付
令和3年改正により導入された最終確認画面の表示義務(後記3(2))の後も、定期購入に関する消費生活相談は高水準で推移しており、「定期縛りなし」「いつでも解約可能」等の表示により解約条件を誤認する事例、最終確認画面の前後でより有利であるかのような取引条件を提示して高額なプランに誘導する「アップセル」、支払総額・契約期間・解約条件等を一体として把握しにくい表示が見られると分析されています。これを受けて中間取りまとめは、現行法の最終確認画面の表示義務や誤認表示の禁止の範囲を拡張し、支払総額の表示、取引条件の分離表示の禁止等の表示方法を義務付けること、注文確定後に契約内容を変更させる場合には変更前後の内容を対照させる等の方法で変更内容を明示することを義務付けること、契約内容を記載した電子書面等を注文完了後遅滞なく電子メール等により交付することを義務付けることを提言しています。
(4) 解約場面 ― 解約手続妨害
解約場面については、解約手続を不当に遅延させる行為や、契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為について、取引慣行も踏まえつつ、違法行為として規律の対象とすべきであるとされています。また、法定返品権によらない解除等の申出を受けた場合に、必要な事実確認を行うことなく返品特約のみを理由として権利が存在しない旨を告げる行為を、新たに行政処分の対象とすることも提言されています。
3 現行法の下での規律
(1) 誇大広告の禁止(特定商取引法12条)
通信販売の広告において、商品の性能、申込みの撤回・解除に関する事項その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示をすることは禁止されています(特定商取引法12条)。主務大臣は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出がない場合には誇大広告とみなされます(同法12条の2)。
(2) 最終確認画面の表示義務と誤認表示の禁止(同法12条の6)
令和3年改正により、インターネット通販等の最終確認画面(特定申込みに係る手続が表示される映像面)に、①分量、②販売価格・送料、③代金の支払時期・方法、④商品の引渡時期、⑤申込期間の定めがあるときはその旨と内容、⑥申込みの撤回・解除に関する事項を表示することが義務付けられ(同法12条の6第1項)、あわせて、その画面において、申込みとなることについて人を誤認させる表示や、前記各事項について人を誤認させる表示をすることが禁止されました(同条2項)。ダークパターンに関する現行法上の中心的な規律であり、後記4の行政処分事例でも適用されています。
(3) 行政処分 ― 指示・業務停止命令・業務禁止命令
これらの規定に違反し、取引の公正および購入者の利益が害されるおそれがあると認められる場合、主務大臣は是正等の措置を指示することができ(同法14条1項)、利益が著しく害されるおそれがあると認められる場合には、2年以内の期間を限り、通信販売に関する業務の全部または一部の停止を命ずることができます(同法15条1項)。さらに、業務停止命令と同一の期間、法人の役員等に対して、停止を命ずる範囲の業務を新たに開始することの禁止を命ずることができます(同法15条の2第1項)。これらの処分は公表されます。
(4) 消費者の取消権(同法15条の4)
最終確認画面において、表示義務に違反して不実の表示をし、または表示をせず、あるいは誤認表示をしたことにより、消費者が誤認して申込みをした場合、消費者はその申込みの意思表示を取り消すことができます(同法15条の4第1項)。取消しの効果は売上の消滅であり、行政処分とは別の経済的帰結をもたらします。
(5) 刑事罰(同法70条・72条・74条)
最終確認画面の表示義務(12条の6第1項)に違反して表示をせず、または不実の表示をした者は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金に処せられ、または併科されます(同法70条2号)。業務停止命令・業務禁止命令に違反した場合も同様です(同条3号)。法人には両罰規定が適用され、表示義務違反について1億円以下、業務停止命令違反について3億円以下の罰金刑が科されます(同法74条1項)。誇大広告(12条)や最終確認画面における誤認表示(12条の6第2項)については、100万円以下の罰金が定められています(同法72条1項1号・4号)。
(6) 景品表示法との関係
口コミの捏造、根拠のない「No.1」表示、実績のない通常価格からの二重価格表示などは、景品表示法の優良誤認表示・有利誤認表示(同法5条1号・2号)の問題となります。違反に対しては措置命令(同法7条)のほか、対象商品・役務の売上額の3%の課徴金納付命令(同法8条。課徴金額が150万円未満の場合を除く)があり、令和5年改正により、優良誤認表示・有利誤認表示をした者に対する100万円以下の罰金(同法48条)が新設されています。広告の場面では、特定商取引法と景品表示法の双方から規律が及ぶことに留意が必要です。
4 行政処分事例 ― ASUNOBI株式会社に対する業務停止命令
(1) 事実関係
消費者庁は、2025年9月9日、美容クリームを販売する通信販売業者ASUNOBI株式会社に対し、特定商取引法15条1項に基づき、同月10日から2026年3月9日までの6か月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付および契約締結)の停止を命じ、あわせて同法14条1項に基づき法令遵守体制の整備等を指示しました。また、同社の代表取締役に対し、同法15条の2第1項に基づき、同一の期間、当該業務を新たに開始することの禁止を命じました。
消費者庁の公表資料によれば、同社は、広告において「たった1,980円で2万円以上の高級シミケアを使えるなんて…」「購入回数の縛りなし」「1人1回限り」「1回限り解約不要 追加料金一切なし」などと表示し、1,980円(税込2,178円)のみを支払うことによって商品1本を購入することができ、2本目以降の購入を義務付けられるなどの契約上の制約が課せられることがないかのような表示をしていました。しかし、広告から自動的に遷移するチャットボットページから申し込むことができる契約の内容は、実際には、2回目以降のお届け予定日の15日前までに所定の方法で解除の連絡をしなければ、2回目以降の商品(1回当たり3本・税込19,833円)の支払いを順次義務付けられ続ける期限の定めのない定期購入契約であり、2回目の商品を購入せずに解除する場合にも税込10,945円の支払いが義務付けられるものでした。さらに、最終確認画面においても、初回の販売価格等のみを分離して強調する形式で表示していました。
(2) 法的評価
消費者庁は、商品の効能に関する表示を誇大広告(優良誤認、12条)、販売条件に関する表示を誇大広告(有利誤認・事実相違、12条)、最終確認画面の表示を特定申込みに係る手続が表示される映像面における誤認表示(12条の6第2項)に該当すると認定しました。本件は、「お試し価格」「縛りなし」といった広告表示と、最終確認画面における初回価格の分離強調表示という、中間取りまとめが問題視する典型的な手法が、現行法の下で業務停止命令に結びついた事例です。なお、2025年11月5日にも、別の美容クリーム通販業者(株式会社BIZM)に対して同様に6か月の業務停止命令および代表取締役に対する業務禁止命令が出されています。
(3) 事業者への示唆
第一に、業務停止命令の対象は広告・申込受付・契約締結に及ぶため、事実上の営業停止となります。第二に、処分の名宛人は販売業者とその代表取締役個人であり、広告やサイトの制作を外部に委託していたとしても、販売業者の責任が免れるものではありません。第三に、処分に至る端緒の多くは消費者からの苦情・通報であり、苦情が蓄積した段階では既に調査の対象となっている可能性があります。
5 消費者庁の実態調査にみる典型例
消費者庁の国際消費者政策研究センターが2025年4月に公表したリサーチ・ディスカッション・ペーパー「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」は、消費生活相談情報に基づいて選定した42サイトと、売上高上位の60サイトの合計102サイトについて、調査員が実際に商品・サービスを選択し、購入・契約直前の画面まで手作業で閲覧して事例を収集したものです。該当するサイト数が最も多かった分類は「事前選択」(75サイト)であり、「偽りの階層表示」(69サイト)、「お客様の声」(56サイト)、「強制登録」(45サイト)がこれに続きます。売上高に基づく調査では、総合ショッピングサイト、食品、化粧品・医薬品、宿泊サービスの業種において、調査対象のすべてのサイトで「事前選択」が見られたと報告されています。同センターは、「隠された情報」「感情のゆさぶり」「カウントダウンタイマー」「隠れたコスト」「キャンセル困難」等の事例をイラスト化した「ダークパターン事例イラスト集」も公表しており、自社サイトの点検の基準として活用することができます。
6 事業者の対応
(1) UI・UXの総点検
判定の基準は、担当者の意図ではなく「一般的な消費者が通常の注意をもって見た場合にどう認識するか」であり、高齢者・未成年者も含まれます。消費者庁の調査と同じ方法で、スマートフォンとPCの双方で申込み直前の画面まで実際に操作して画面を記録し、事例イラスト集の分類と照合することが実務的です。事前選択、偽りの階層表示、カウントダウンタイマー、口コミの4類型は、現行法の下でも特定商取引法12条・12条の6または景品表示法5条の問題となり得るため、優先的に点検すべきです。点検の日時、担当者、対象画面、修正内容を記録に残しておくことは、消費者庁から報告徴収や資料提出要求を受けた際に、法令遵守体制の存在を示す資料となります。
(2) 解約・退会プロセスの簡素化
基準は「申込みと同程度の手間で解約できるか」です。申込みは数クリックで完了するのに、解約は平日日中の電話のみで、かつつながりにくいという運用は、中間取りまとめが違法行為として規律する方向を示す「契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続」の典型であり、改正後に最初に問題とされる類型と考えられます。具体的には、解約導線をマイページの第1階層に置くこと、引き止め表示は多くても1回とし、そこから解約手続に直接進めるようにすること、電話以外の解約手段(フォーム、メール)を用意することが考えられます。「いつでも解約可能」と表示する場合には、次回発送の何日前までという条件を、広告と最終確認画面の双方に、強調表示と同程度の視認性で記載する必要があります。
(3) 最終確認画面の明確化
最終確認画面は、現行法の12条の6がすでに適用されており、行政処分・刑事罰・取消権のすべてに直結する、現時点で最もリスクの高い画面です。同条1項の6項目が揃っているか、初回価格のみを強調し2回目以降の価格や総額を目立たない形にしていないか、定期購入について回数と支払総額が一目で分かるか、送料・手数料がこの画面で初めて現れていないかを確認してください。中間取りまとめが「支払総額の表示」と「取引条件の分離表示の禁止」を提言していることを踏まえ、現時点から支払総額を一体として表示する設計に改めておけば、改正後の対応も兼ねることになります。
(4) 注文完了メールによる契約内容の交付
契約内容を記載した電子書面を注文完了後遅滞なく交付することが義務化される方向にあります。注文完了メールに、分量、価格、支払総額、支払方法、引渡時期、定期購入の場合の回数・期間、解約の条件と方法をすべて記載しておくことは、改正への先行対応であると同時に、消費者との紛争において契約内容を立証する証拠にもなります。
(5) 制作会社・カートベンダーとの契約と責任の所在
中小企業では、サイトを制作会社に委託し、またはECモールやカートシステムのテンプレートをそのまま利用する例が多く見られます。しかし、特定商取引法の表示義務は販売業者に課されており、業務停止命令も取消権による返金も、販売業者に向けられます。「制作会社の提案どおりに作った」という事情は、行政処分の場面では考慮されません。したがって、制作会社やカートベンダーとの契約において、法令に適合した表示とする義務、法令違反が判明した場合の修正義務、損害の分担に関する条項の有無を確認し、なければ次回の更新時に加えること、「売れるデザイン」の提案は公開前に法務または顧問弁護士が確認する手順を設けること、テンプレートの事前選択やカウントダウンの初期設定を自社で確認して変更することが必要です。
(6) 相談体制と初動対応
消費者からの苦情、消費生活センターからの照会、消費者庁や経済産業局からの報告徴収や資料提出要求は、いずれも行政処分に至る端緒となり得ます。これらを受けた場合には、広告・最終確認画面・解約導線の現状を直ちに保全したうえで、表示の修正、返金・解約対応の方針、当局への報告の内容を弁護士と協議して決める必要があります。特に、特定商取引法12条の2に基づく合理的根拠資料の提出要求に対しては、期間内に合理的な根拠を示せなければ誇大広告とみなされるため、初動が重要です。
点検事項
- ① 自社のECサイト・LP・申込フォームについて、スマートフォンとPCの双方で申込み直前の画面まで実際に操作し、画面を記録したうえで、消費者庁の事例イラスト集の分類と照合したか
- ② 単品購入と定期購入、通常サイズとお徳用サイズ、メルマガ配信の有無などの選択肢について、事業者に有利な選択肢が初期状態で選択されていないか
- ③ 選ばせたい選択肢だけを大きく目立たせ、他の選択肢を視認しにくくしていないか。「全額保証」「いつでも解約可能」等の強調表示の条件が、同程度の視認性で表示されているか
- ④ 口コミ、在庫状況、カウントダウンタイマー、「No.1」等の表示について、事実の裏付けと合理的な根拠資料があるか
- ⑤ 最終確認画面に、分量、販売価格・送料、支払時期・方法、引渡時期、申込期間、解約に関する事項の6項目が表示されているか。初回価格のみを分離して強調していないか。定期購入の回数と支払総額が一体として表示されているか
- ⑥ 解約・退会の手続が、申込みと同程度の手間で完了するか。引き止め表示は1回までか。電話以外の解約手段があるか。「いつでも解約可能」の条件(次回発送の何日前まで等)を広告と最終確認画面に明示しているか
- ⑦ 注文完了メールに契約内容(分量・価格・支払総額・支払方法・引渡時期・回数・解約条件)をすべて記載しているか
- ⑧ 制作会社・カートベンダーとの契約に、法令適合表示の義務、修正義務、損害分担の条項があるか。公開前に法務・顧問弁護士が表示を確認する手順があるか
よくあるご質問
Q. ダークパターン規制は、すでに施行されているのですか。
A. 施行されていません。2026年9月10日に消費者庁の検討会が中間取りまとめを公表し、10月31日まで意見募集が行われている段階であり、報道によれば2027年の通常国会に特定商取引法改正案が提出される見込みです。ただし、現行の特定商取引法12条(誇大広告の禁止)、12条の6(最終確認画面の表示義務・誤認表示の禁止)、景品表示法5条(優良誤認・有利誤認表示の禁止)の下で、ダークパターンに該当する表示はすでに行政処分・刑事罰・取消権の対象となっており、2025年度には6か月の業務停止命令が出ています。
Q. 解約時に「本当に解約しますか」と1回確認することも違法になりますか。
A. 中間取りまとめは、取引内容の確認に必要な繰り返しまで規制対象とすべきではないとの指摘を付記したうえで、規制対象となる「操作の反復」の内容や程度を明確化すべきとしており、確認を1回行うこと自体が直ちに違法とされる方向ではありません。問題となるのは、申込みに比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続や、解約を不当に遅延させる運用です。引き止め表示は多くても1回とし、そこから解約手続に直接進めるようにしておくことをお勧めします。
Q. サイトは制作会社が「売れるデザイン」として提案したものです。責任は制作会社にあるのではないですか。
A. 特定商取引法の表示義務は販売業者に課されており、行政処分の名宛人も販売業者とその役員です。ASUNOBI株式会社の事例でも、処分を受けたのは販売会社と代表取締役個人でした。制作会社の提案に従ったという事情は、行政処分の場面では考慮されません。制作会社との間の責任の分担は、制作委託契約における法令適合義務や損害分担の条項によって、別途民事上の問題として処理されることになります。
Q. 最終確認画面に不備があった場合、どのような不利益がありますか。
A. 行政処分(指示、2年以内の業務停止命令、役員に対する業務禁止命令)、刑事罰(表示義務違反については3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金。誤認表示については100万円以下の罰金)、消費者による申込みの取消し(特定商取引法15条の4)の三方向の不利益があります。業務停止命令は広告・申込受付・契約締結に及ぶため、その期間の新規売上は生じません。
まとめ
ダークパターン規制は、法改正が確定路線となった段階にあり、改正法の効力が生じるのは2027年以降と見込まれます。しかし、現行法の下でも、誇大広告の禁止、最終確認画面の表示義務・誤認表示の禁止、景品表示法の優良誤認・有利誤認表示の禁止により、ダークパターンに該当する表示は行政処分・刑事罰・取消権の対象となっており、6か月の業務停止命令という事実上の営業停止に至った事例が現に存在します。事業者が行うべきことは、改正を待つことではなく、一般的な消費者の目線でUI・UXを総点検し、解約・退会プロセスを申込みと同程度に簡素化し、最終確認画面に支払総額を含む取引条件を一体として表示し、注文完了メールで契約内容を交付し、制作会社との契約と公開前の法務確認の手順を整えることです。当事務所では、ECサイト・広告の表示の適法性確認、定期購入・解約条項の設計、制作委託契約の整備、消費者庁・経済産業局からの照会や報告徴収への初動対応を、顧問契約に基づき継続的に支援しています。
参考資料
- 消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」(2026年9月10日)/消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」(会議資料)
- 消費者庁「『デジタル取引・特定商取引法等検討会中間取りまとめ』に関する意見募集について」(2026年9月16日)
- 消費者庁 国際消費者政策研究センター「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」(2025年4月)/同「ダークパターン事例イラスト集」
- 消費者庁「通信販売業者【ASUNOBI株式会社】に対する行政処分について」(2025年9月10日)/消費者庁「通信販売業者【株式会社BIZM】に対する行政処分について」(2025年11月6日)
- 特定商取引に関する法律(e-Gov法令検索)/不当景品類及び不当表示防止法(e-Gov法令検索)
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」
- 一般社団法人ダークパターン対策協会「ダークパターンに関する意識・実態調査(2026年)」(2026年8月18日)
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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。
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