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医療広告の注意点 ― 医療法・薬機法・景表法・特商法の観点から

クリニックや病院にとって、ウェブサイトやSNSを通じた情報発信は、集患・広報の重要な手段です。しかし、医療に関する広告は、患者保護の観点から医療法・医療広告ガイドラインによって厳しく規制されています。さらに、医薬品・医療機器の効能効果等に触れる場合の医薬品医療機器等法(薬機法)、自由診療や物販を伴う場合の景品表示法(景表法)特定商取引法(特商法)といった規制も重畳的に関わってきます。本コラムでは、医療広告を作成する際に注意すべきポイントを、弁護士・医師の視点から横断的に整理します。

医療法による医療広告規制

医療に関する広告は、虚偽・誇大な内容によって患者が不適切な受診をしないよう、医療法および医療広告ガイドラインで規制されています。ウェブサイトも、一定の場合には広告規制の対象となります。

根拠となる条文は医療法6条の5です。同条1項は、何人も、医業等に関して虚偽の広告をしてはならないと定め、2項は、比較優良広告・誇大広告等をしてはならないという広告の内容・方法の基準を定めています。さらに3項は、広告可能な事項を、医師の氏名、診療科名、提供される医療の内容など一定の範囲に限定しています(広告可能事項の限定)。ある情報発信が「広告」に該当するかは、(1)患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)、(2)医業等を提供する者の氏名または病院・診療所の名称が特定可能であること(特定性)の2要件で判断されます。平成29年の医療法改正(平成30年6月施行)により、医療機関のウェブサイトやSNS等もこの規制の対象に位置付けられました。

原則として禁止される広告

  • 虚偽広告(「絶対安全」「必ず治る」など)
  • 比較優良広告(「日本一」「No.1」など他院との優劣を示すもの)
  • 誇大広告
  • 患者等の体験談(誤認を与えるもの)
  • 治療効果について誤認を与えるビフォーアフター写真
  • 公序良俗に反する内容

限定解除の要件

ウェブサイト等において、問い合わせ先の明示や、自由診療の内容・標準的な費用・治療のリスク・副作用等の記載といった要件(限定解除要件)を満たす場合には、通常は広告できない事項についても情報提供が可能とされています。医療法施行規則1条の9の2が定める要件は、概ね次のとおりです。

  • 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること
  • 表示される情報の内容について、問い合わせ先を記載するなど、容易に照会ができるようにすること
  • 自由診療については、通常必要とされる治療等の内容・費用等に関する事項を情報提供すること
  • 自由診療については、治療等に係る主なリスク・副作用等に関する事項を情報提供すること

特に自由診療を扱うページでは、費用・リスク・副作用の記載漏れが行政から指摘されやすいため、ページ単位での点検が必要です。

医薬品医療機器等法(薬機法)の観点

医療機関の広告であっても、医薬品や医療機器の効能効果・性能等に触れる場合には、薬機法の広告規制が関わってきます。医療法とあわせて確認すべき重要な観点です。

虚偽・誇大広告の禁止

医薬品・医療機器等の名称、製造方法、効能効果・性能に関して、虚偽または誇大な広告を行うことは禁止されています。承認等を受けた範囲を超える効能効果をうたうこともできません。

未承認の医薬品・医療機器の広告禁止

承認・認証を受けていない医薬品・医療機器について、その名称・効能効果等を広告することは禁止されています。特に美容医療・自由診療で、未承認の医薬品・医療機器(個人輸入したものを含む)を用いる場合は注意が必要です。医療広告ガイドライン上も、こうした自由診療を広告する際には、未承認である旨、入手経路、国内の承認医薬品等の有無、諸外国における安全性等に関する情報を明示することが、限定解除の要件として求められています。

薬機法上の広告規制の中心は、名称・製造方法・効能効果等に関する虚偽・誇大広告の禁止(薬機法66条)と、承認前の医薬品・医療機器の広告の禁止(薬機法68条)です。違反には2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金(併科あり)が定められているほか、虚偽・誇大広告については、令和元年改正により、対象期間中の売上額の4.5%の課徴金納付命令の制度(薬機法75条の5の2)も導入されています。

景品表示法(景表法)の観点

自由診療や美容医療、健康食品・物販などを扱う場合は、景表法上の優良誤認表示(実際よりも著しく優良であると示す表示)や有利誤認表示(価格や取引条件を著しく有利に見せる表示)に注意が必要です。効果・効能をうたう場合には合理的な根拠が求められ、「通常価格」との比較といった二重価格表示にも留意が必要です。

条文レベルでは、景表法5条が、商品・役務の内容についての優良誤認表示(同条1号)と、価格その他の取引条件についての有利誤認表示(同条2号)を禁止しています。違反に対しては措置命令(景表法7条)が行われ、事業者名とともに公表されます。優良誤認が疑われる場合、行政は期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができ、提出できなければ不当表示とみなされます(不実証広告規制。景表法7条2項)。さらに、優良誤認・有利誤認表示には、対象商品・役務の売上額の3%の課徴金納付命令の制度(景表法8条)があります。また、景表法26条により、事業者には表示を適正に管理するための体制整備も義務付けられています。

特定商取引法(特商法)の観点

ウェブでの物販(通信販売)を行う場合には、事業者名・価格・支払方法・返品や解約の条件などの表示義務が課されます。また、美容医療のうち一定の継続的な役務は「特定継続的役務提供」に該当し得え、契約書面の交付やクーリング・オフなどの規律が適用される場合があります。

通信販売については、広告に価格・支払時期・引渡時期・返品特約等を表示する義務(特商法11条)と、誇大広告等の禁止(特商法12条)が定められています。また、いわゆる美容医療のうち政令で定める施術であって、提供期間が1か月を超え、かつ、金額が5万円を超えるものは「特定継続的役務提供」(特商法41条以下)に該当し、概要書面・契約書面の交付義務のほか、8日間のクーリング・オフ(特商法48条)、中途解約権と解約時の清算ルール(特商法49条)が適用されます。該当する施術を提供する場合、書面の整備を欠くとクーリング・オフ期間が進行しないなど、経営への影響が大きい点に注意が必要です。

違反した場合のリスク

医療広告規制への違反は、次のような段階的な措置・制裁につながります。

  • 報告命令・立入検査 ― 都道府県等は、広告規制違反の疑いがある場合に報告を命じ、立入検査を行うことができます(医療法6条の8第1項)
  • 中止命令・是正命令 ― 違反広告に対しては、広告の中止または内容の是正が命じられます(医療法6条の8第2項)
  • 罰則 ― 虚偽広告や命令への違反には、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています
  • 景表法・薬機法上の措置 ― 措置命令や課徴金納付命令の対象となり、事業者名の公表による信用面の損失も生じます
  • 民事上のリスク ― 広告と実際の施術内容の食い違いは、患者に対する説明義務違反や契約トラブル、返金請求の原因ともなります

実務上のポイント

  • 効果・効能に関する表現は、根拠資料を整備・保管しておく
  • 自由診療は、費用・リスク・副作用を明示する
  • 体験談・ビフォーアフターの掲載可否と方法を慎重に判断する
  • 価格表示・解約条件を正確に記載する
  • 限定解除要件(問い合わせ先・費用・リスク・副作用等)の記載をページ単位で点検する
  • ウェブサイトだけでなく、SNS・ポータルサイト・リスティング広告など媒体ごとに規制適用の有無を整理する
  • 行政からの照会に備え、広告の掲載履歴と根拠資料を保管する
  • 広告代理店や制作会社任せにせず、公開前に内容を最終確認する
医療広告は、医療法を軸に、薬機法・景表法・特商法が重畳的に適用される領域です。一つの広告でも、複数の法令の観点から横断的にチェックすることが欠かせません。

よくあるご質問

Q. クリニックの公式ホームページやSNSも医療広告規制の対象になりますか?

A. 平成29年の医療法改正(平成30年6月施行)により、患者の受診等を誘引する意図のある医療機関のウェブサイトやSNS等の情報発信も広告規制の対象に位置付けられました。虚偽・誇大な内容や比較優良広告は、媒体を問わず禁止されます。一方、ウェブサイト等は限定解除の要件を満たせば通常は広告できない事項も記載できるため、実務上は、限定解除要件を満たす形で内容を作り込むことがポイントになります。

Q. 治療前後の症例写真(ビフォーアフター)は掲載できないのですか?

A. 一律に禁止されているわけではありません。禁止されるのは、写真を加工・修正したり、治療内容・費用・リスク・副作用等の説明を欠いたりするなど、治療効果について誤認を与えるおそれのある掲載方法です。医療広告ガイドライン上、限定解除要件を満たすウェブサイト等において、詳細な説明を付した症例写真であれば掲載できる場合があります。掲載の可否は表現方法と説明の充実度によって決まるため、個別の確認が必要です。

Q. 「地域No.1」「最新の治療」といった表現は使えますか?

A. 「No.1」「日本一」「最高」など、他の医療機関との比較により自院の優良性を示す表現は、比較優良広告として原則禁止されます。医療広告では、たとえ事実であっても比較優良広告は認められないとされている点に注意が必要です。「最新」という表現も、根拠なく新しさを強調するものは誇大広告と判断されるおそれがあります。自院の特徴は、他院との比較によらず、事実に即して具体的に記載する形に置き換えることが安全です。

まとめ

医療広告規制への違反は、行政指導や措置命令の対象となるだけでなく、医療機関の信用を損なうことにもつながります。発信前に、複数の法令の観点から確認する体制を整えておくことが重要です。当事務所では、医師免許を持つ弁護士が、医療現場の実情を踏まえて、広告表現のリーガルチェックから体制づくりまで支援します。

参考資料

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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際のご対応にあたっては、最新の法令・ガイドラインをご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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