顧問弁護士を付けるべきか迷う経営者の多くは、「月々の顧問料に見合う価値があるのか」「相談することがない月は無駄になるのではないか」という疑問を持っています。本コラムでは、顧問契約のメリットを具体的に10項目に整理し、あわせてデメリットとして指摘される4項目とその対処法を、弁護士の立場から率直に解説します。
顧問弁護士の10のメリット
① 予約不要で、迷う段階から相談できる
スポットで弁護士に相談する場合、面談の予約を取り、相談料を支払い、事情を一から説明する必要があります。この手間があるために、「弁護士に聞くほどのことか」と迷った案件は相談されないまま進み、後に紛争になります。顧問契約では、チャットや電話で気軽に相談でき、「これは聞いておくべきか」と迷う段階から弁護士の判断を得られます。
② 会社の事情を理解した弁護士が答える
事業内容、取引先、組織、過去の経緯を把握した弁護士が回答するため、一般論ではなく自社に即した判断が得られます。相談のたびに背景を説明する時間が不要になり、回答の精度も上がります。
③ 契約書・規程のリーガルチェックが顧問料に含まれる
顧問先以外からのリーガルチェックは1通ごとに費用が発生しますが、顧問先には顧問契約で定めた範囲で顧問料に含めて対応するのが一般的です。取引先から提示された契約書を確認しないまま押印する状態から、すべての契約書を弁護士が確認する状態へ移行できます。
④ 紛争の芽を早期に発見できる
日常の相談の中で、経営者自身が気付いていないリスク(労働時間管理の不備、取適法違反、表示規制への抵触など)を弁護士が指摘します。紛争は「平時の小さな綻び」から生じるため、綻びを早期に閉じることが最も費用の小さい紛争対策です。
⑤ 法改正に自社の対応が追いつく
労働法、個人情報保護法、下請法から取適法への改正、フリーランス法、カスタマーハラスメント対策の義務化など、毎年の法改正のうち自社に影響するものを個別に知ることができます。改正のたびに自力で情報を集め、適用の有無を判断する負担がなくなります。
⑥ 緊急時に優先して対応してもらえる
労働審判の申立書や仮処分の通知が届いたとき、顧問先の案件は優先的に着手されます。労働審判は原則3回以内の期日で終結し、第1回期日までに答弁書と証拠を揃える必要があるため、初動の速さが結果を左右します。
⑦ 個別案件の弁護士費用が優遇される
訴訟や交渉を個別に受任する場合、顧問先には顧問料の額と契約期間を考慮して着手金・報酬を優遇するのが通常です。紛争が発生したときの費用を含めて考えると、顧問契約の実質的なコストはさらに下がります。
⑧ 対外的な信用が高まる
会社案内やWebサイトに「顧問弁護士」を表示できます。取引先・金融機関・採用候補者への安心材料となり、不当な要求や悪質なクレームへの抑止にもなります。
⑨ 登記・知財・税務まで一つの窓口で済む
司法書士・弁理士・税理士など他の専門家が在籍または連携している事務所であれば、「弁護士に聞いたら別の専門家を探すよう言われた」という手戻りがありません。商業登記、商標、税務が絡む案件を一体で相談できます。
⑩ 顧問料は経費として計上できる
顧問料は支払報酬として損金に算入できます。法務担当者を一人雇用する人件費と比較すると、専門性・即応性・カバーできる分野の広さの点で、顧問弁護士は合理的な選択となることが多いといえます。
顧問弁護士の4つのデメリットと対処法
メリットだけを並べるのは公平ではありません。顧問契約には次のような負担や制約があり、それぞれに対処法があります。
① 相談がない月も顧問料が発生する
最も多く挙げられるデメリットです。対処法は、顧問料を「待機料」ではなく「体制整備の対価」として使うことです。契約書ひな型の年次見直し、就業規則の法改正対応、取引先の与信管理の点検、役職員向け研修、新規事業の適法性の事前確認など、相談がない月にこそ取り組める業務を、契約開始時に弁護士と計画しておくと、顧問料は無駄になりません。また、相談の頻度に応じたプランを選び、業務量の変化に合わせて見直せる契約にしておくことも重要です。
② 弁護士との相性が合わない
顧問弁護士は数年単位で付き合う相手です。回答の速さ、説明の分かりやすさ、経営の視点で考えてくれるか、といった相性は契約前の面談である程度分かります。契約期間を1年程度とし、中途解約の条件を確認しておけば、合わない場合の見直しも可能です。
③ 専門分野の偏り
一人の弁護士がすべての分野に精通しているわけではありません。企業法務を主軸とする事務所か、自社の業種の規制に詳しいか、事務所内に他の分野の弁護士や他士業がいるかを確認してください。専門性の高い分野(知財、M&A、医療、国際取引など)については、既存の顧問弁護士と分野を分けて別の事務所と契約する方法もあります。
④ 利益相反の制約
弁護士は、依頼者と利害が対立する相手方の事件を受任できません(弁護士法25条、弁護士職務基本規程27条・28条)。主要な取引先や競合が既にその事務所の顧問先である場合、将来の紛争で代理を受けられない可能性があります。契約前に利益相反の確認を依頼し、問題がある場合は別の事務所を検討してください。
スポット依頼・法務担当者の雇用との比較
顧問契約の価値は、他の選択肢と比較すると明確になります。スポット依頼は都度予約と相談料が必要で、毎回事情の説明が必要であり、受任までに時間がかかります。法務担当者の雇用は年間数百万円の人件費がかかり、一人でカバーできる専門分野に限界があり、訴訟では結局外部の弁護士に依頼することになります。顧問契約は、月額固定で事務所全体の専門性を利用でき、事情を知る弁護士が即日対応し、個別案件の費用も優遇されるという点で、中小企業にとって最も費用対効果の高い選択肢となることが多いといえます。
顧問弁護士の価値が最も出る場面
顧問弁護士の価値が最も出るのは、紛争の解決ではなく、紛争を起こさない体制をつくる場面です。退職した従業員からの未払残業代請求は過去3年分に遡り(労働基準法115条)、付加金の支払を命じられることもあります(同法114条)。契約書の不備による損害賠償、業法違反による行政処分は、一件で数百万円から数千万円の損失になります。顧問弁護士による平時の点検でこれらの一件を防げば、年間の顧問料は十分に回収されます。顧問弁護士の費用相場と料金の決まり方もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 顧問弁護士の最大のメリットは何ですか。
A. 会社の事業・組織・経緯を継続的に把握した弁護士に、予約や相談料を気にせず「これは聞いておくべきか」と迷う段階から相談できることです。紛争の芽を早期に発見し、平時の体制整備によって紛争の発生確率そのものを下げられます。
Q. 顧問弁護士のデメリットは何ですか。
A. 相談が少ない月も顧問料が発生すること、弁護士との相性や専門分野の偏り、取引先や競合が同じ事務所の顧問先である場合の利益相反が挙げられます。いずれも契約前の確認と、顧問料に含まれる業務の設計で対処できます。
Q. スポットで依頼するのと比べてどう違いますか。
A. スポット依頼は都度予約と相談料が必要で、毎回事情を説明することになります。顧問契約では事情を知る弁護士が即日対応し、契約書チェックや法改正情報が顧問料に含まれ、個別案件の費用も優遇されます。
まとめ
顧問弁護士のメリットは、気軽に相談できる、会社の事情を知る弁護士が答える、契約書チェックが顧問料に含まれる、紛争の芽を早期に発見できる、法改正に追いつける、緊急時に優先対応、費用の優遇、対外的な信用、他士業との連携、損金算入の10項目に整理できます。デメリットとして挙げられる顧問料の負担、相性、専門分野の偏り、利益相反は、契約前の確認と顧問料の使い方の設計で対処できます。当事務所の顧問弁護士サービスでは、初回面談で事業内容と現在の体制をお伺いし、顧問料に含まれる業務の範囲を明記したお見積りをご提示しています。
参考資料
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本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。
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