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税制適格ストックオプションを活用するための実務ポイント

スタートアップが優秀な人材を惹きつけ、長期的に活躍してもらうための重要なインセンティブが「ストックオプション」です。中でも税制適格ストックオプションは、権利行使時の課税が繰り延べられ、株式の売却時にまとめて譲渡所得として課税されるため、付与を受ける役職員にとってメリットの大きい制度です。一方で、税制適格の要件は細かく、設計や運用を誤ると「非適格」と扱われ、想定外の税負担が生じるおそれがあります。本コラムでは、税制適格ストックオプションを活用するうえで押さえておきたい実務上のポイントを整理します。

税制適格ストックオプションとは

ストックオプションは、あらかじめ定めた価額(権利行使価額)で自社株式を取得できる権利です。通常(非適格)の場合、権利行使時の株式の時価と行使価額との差額が給与所得等として課税され、まだ株式を売却して現金を得ていない段階で納税資金が必要になることがあります。

これに対し、一定の要件を満たす税制適格ストックオプションは、権利行使時には課税されず、取得した株式を売却した時点で、売却価額と行使価額との差額が譲渡所得(おおむね約20%)として課税されます。課税のタイミングが後ろ倒しになり、税率面でも有利になり得る点が大きな特徴です。

主な税制適格要件

税制適格となるためには、租税特別措置法などに定められた要件をすべて満たす必要があります。主なものは次のとおりです。

  1. 付与対象者が、自社または一定の関係会社の取締役・使用人等であること(一定の社外高度人材を含む)
  2. 権利行使期間が、付与決議の日後2年を経過した日から10年(一定の設立間もない非上場会社は15年)を経過する日までの範囲内であること
  3. 権利行使価額が、契約締結時の株式の時価以上であること
  4. 権利行使価額の年間合計額が、定められた限度額を超えないこと
  5. 新株予約権の譲渡が禁止されていること
  6. 取得した株式が、証券会社等を通じて一定の方法で保管・管理されること

設計・運用で誤りやすいポイント

権利行使価額の設定

権利行使価額は「契約締結時の時価以上」とする必要があります。直近の資金調達時の株価や、必要に応じて第三者による株価算定を踏まえ、合理的に設定することが重要です。時価より低く設定してしまうと、その時点で税制適格の要件を満たさなくなるおそれがあります。

付与対象者の範囲

付与時点で大口株主に該当する者など、対象外となる場合があります。また、社外の協力者へ付与する場合には、いわゆる「社外高度人材」に関する要件や手続を満たしているかを確認する必要があります。

行使限度額の管理

権利行使価額の年間合計額には上限が設けられています。令和6年度の税制改正により、会社の区分に応じて最大で年間3,600万円まで限度額が引き上げられましたが、複数回にわたって付与する場合には、累計額を適切に管理することが欠かせません。

税制適格ストックオプションは、設計段階の小さな見落としが「非適格」という大きな結果につながり得ます。付与のたびに、その時点の最新の要件を確認することが重要です。

まとめ

ストックオプション税制は近年改正が重なり、行使限度額の引上げや社外高度人材の活用拡大など、スタートアップにとって使いやすい方向で整備が進んでいます。一方で、要件は依然として複雑であり、設計・運用を誤ると本来のインセンティブ効果を損なうおそれがあります。資本政策全体を見据え、設計段階から専門家に相談することで、インセンティブ効果を最大化しつつ税務リスクを抑えることができます。

本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的・税務的助言ではありません。実際のご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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